虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
霊体の問題 その09
W40
最強すぎる【魔王】はともかく、劣勢な情勢にある【幽王】をどうにかせなばならないということで……さっそく転移。
今なお争いが続いているのだが、一時的にそれは停止している。
無限に現れる人形の軍勢。
そのすべてが『SEBAS』によって統率され、両軍を分かつような位置で武装してスタンバイしていた。
「……わりと強引な止め方なんだな」
《ですが、時間稼ぎにしかなりません。突破する方法はいくらでも考え付きますので》
「それでもそれが最適解だったんだろう? なら、そうしてくれて構わない──さて、あれが魔王城ならぬ幽王城だな……城っぽさはあまりないけど」
ドローンに乗って高い場所から俯瞰している俺だが、幽王城はそれなりに高いと思う。
東京のタワーほどではないにしても……高層ビルぐらいの高さを誇っている。
城らしい要素がやや欠けているアスレチック施設という例えだが、過去に繋がっていた世界の技術が影響しているのかもしれない。
「あれはなぜか分かるか?」
《旦那様のご想像通り、別世界の技術力が影響しているのかと》
「幽魔と接点を持つ世界が在ったわけだ……ふむ、ただ殲滅するだけで解決しなくて正解だったな」
相当にギミックが組み込まれているだろうな……素材はこの世界の物を使えば機能するだろうし、機械も不可能ではないと思う。
だが限りなくそれに近い難易度だ。
この世界に機械という概念は、ほぼ無縁に近いのだから。
◆ □ ◆ □ ◆
内部もまた、ギミックがいっぱいだった。
幽魔たちがてんやわんやで動き、俺と護衛の人形たちを招き入れる。
その移動に用いられる仕掛けの数々。
エレベーターはもちろんのこと、某魔法学校にあるような動く階段まであった。
「『SEBAS』……あれ、いったいどういう風に運用しているんだ?」
撮影時には実際の階段と小さなプラモデルの階段を使い分けて見せていたらしいが……俺は自分の目が騙されているとは思えない。
目の前でたしかに動く階段……実にファンタジーな光景に思わず尋ねる。
《……現状では判断不可能です》
「……ッ!? 『SEBAS』でもか」
《冒険世界や地球の技術では決して再現不可能です。レムリアが関わっていたその世界は高度な科学技術を有していたのでしょう》
「マジか……解析はできるんだよな?」
初めての解答不可ではあったが、なんとなく『SEBAS』からは強い意思のようなものを感じた。
《可能です。既存の知識すべてを用い、その技術を会得してみせましょう》
「ああ、頼んだぞ『SEBAS』……俺の補助もいっしょにな」
最後は締まらなかったが、それでも必要なことだ。
俺に【幽王】の事情はさっぱりだしな。
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