虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
霊体の問題 その06
内部を見て驚く、扉の先は自然と整備されていたからだ。
魔物などの気配はなく、そこには魔法陣が設置されていた。
「魔法陣タイプの移動装置か……うん? 一部分が欠けているな」
《おそらく、乗った者によって変化があるのでしょう。欠けている部分は転移先、双方で認証が行われていなければ、転移ができないようになっています》
「初期地点のセーブ石は、その術式を圧縮したのか? 通常版は作れたけど、そっちは複製できなかったんだよな」
別の世界へ行く機会が無かったので、わざわざ新たに機能を追加しようと思うことも無かったのだ。
先に世界を渡る術式は確立していたし、他の世界へ渡ろうと思っていなかったからな。
「だがまあ、とりあえず乗ってみるか……俺の場合は何個出てくるんだ?」
念のため、セーブ石をここに配置して死に戻り地点を書き換えておく。
「よいしょっと……おっと、ここら辺の仕様は同じようになっているのか」
初めて『幽源世界』へ向かおうとした際と同じUIが、目の前に表示されている。
そこに載る世界のリスト……新規の世界名は載っていなかった。
「そして、アイプスルの名も載っていない」
《やはり、そうなっておりましたか。アイプスル側の許可が下りていないからでしょう》
「というか、そもそもアイプスルって名前は俺たちで決めたものだしな。初期の名前が未定だったし……本当にデバックかな?」
神様云々、初期設定の女神様の上司が何かしらの関係を持っているとは思う……だが、接点も無いのでどうしようもない。
せめて試練があれば……と思うが、不思議と迷宮や試練との出会いが無いんだよな。
「扉自体を開けたから、問題はないだろうけど……試す必要があるか?」
《人形を使いましょう。本来は複数人であろうと、転移先はそれぞれ個人での制限が設けられておりますが……旦那様の渡航許可をすでに複製しております》
「……えっ、そんなことできるの?」
生物には無理だが、人形に施すことはできるらしい。
俺には向かうことのできない他の世界への渡航許可を、得ることはできなさそうだ。
いやまあ、考えてみれば方法なんてその気になればいくらでも浮かぶけどさ。
「人形は……飛んだか?」
《はい。冒険世界への転送を確認》
「光学迷彩を起動していなかったら、間違いなく話題になっていたな……戻ってきた戻ってきた」
何事もなく、転移が行えることも確認できた……ここは問題なしだな。
「あとは幽魔だけだな……さて、どうやって対処するか」
まずは……調べないと。
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