虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
霊体の問題 その05
必要な材料は準備し終えた。
あれから数時間後、『SEBAS』が操縦するドローンの一機が目的地へ到着する。
座標を記録したので、俺はすぐにでも転移することが可能だ。
待機時間で転移自体が行えることは、すでに確認済みなので問題ない。
「──いざ行かん、彼の地へと」
暇だったので、あることを試してみた……魔力ではなく、霊力による移動は可能かどうかという実験だ。
魔力の代わりに魂魄力とも呼ぶべき概念を組み込むのは苦労したが、霊脈というエネルギー源から霊石と呼ばれる供給源を作っていたので問題は無い……これは前に来たときの話。
アイプスルでも魂魄力を使えるように解析し、魔力の理論を組み込むことで何か別のことに使えないかを考えた結果……その凝縮を行うという結論に至った。
そもそも霊石を作ったときだって、ある程度濃縮して作製したのだ。
それを極限まで行い、錬金術を用いてエネルギーを束ねることで……完成した。
完成した『霊珠』は、一つで普通の霊石百個分の役割を果たせる。
それにより、遠い場所への転位にも耐えられるだけの容量を手に入れたのだ。
◆ □ ◆ □ ◆
N40
冒険世界の場合、転位も転移も俺自身が膨大な魔力を持っているうえ、星脈の位置をある程度把握しているため、それを利用することで比較的簡単に移動している。
だがこの世界の場合、俺自身の魂魄力が低いうえ、先に挙げた変な実験によってさらなる苦労が俺を襲う。
──ただ俺の勘のような経験則が、新しい力は試しておけと囁いていたんだよな。
「それはこれが理由だったのか……」
ドローンが俺を転移させたのは、巨大な扉の目の前……もちろんそれが異なる世界へ移動するための装置というわけではなく、その装置がある施設の入り口なのだ。
「そういえば言語解析は済ませてくれていたみたいだな……なになに? [扉が閉ざされし時、豊饒の力が再び扉を開けん]……つまり、魂魄力が必要なのね」
正確には、魂魄力ではなく霊脈の活性化が要求されているのだろう。
だがその霊脈を活性化させるためには、魂魄力を捧げる必要があるのだ。
かつての人々が厄災を退けるために生贄を捧げたように……魂魄力を持つ存在を対価とし、恵みの力は回復する──ちなみにこれ、アイプスルも似たような仕様である。
「そしてそれを行うために、これがあるわけで……まあ、さすが:DIY:だな」
霊珠を一つ捧げると、それだけで扉は眩い輝きを放ち始めた。
つまりそれは、豊饒を誤認してしまうほどのエネルギーを霊珠が宿してことの証明であるわけで……。
生産チート、ここに極まれたりである。
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