虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
卵孵化 前篇
ドゥーハスト国におけるお祭りにおいて、『タコ焼き』を販売していた俺。
そこで作った一部は転送し、家族の下へ届けられる。
我が家にタコが食べられない者はいないので、全員からお褒めの言葉を賜った。
もし『SEBAS』から自制するように言われなければ、すぐにでも大量製造に入っていたかもしれない。
だが今では考えを改めた──そう、タコ焼き以外にも作るべきだと!
「……って、思っていたんだけどな」
『いったい何をしているのだ。もう間もなくだと思い、呼びだしたというのに』
「悪い悪い、最近はいろいろ立て込んでいてな。小蜘蛛さんとの連絡も上手くいっているようだし……どうしたんだ?」
『まったく……すでに忘れているのか、お前は。結論から簡潔に伝えよう──あと数十分もしない内に守護獣が誕生するぞ』
その瞬間、カチリとスイッチが切り替わるようにやるべきことが脳内で爆発する。
「せ、『SEBAS』!」
《ご安心ください、旦那様。すでにカメラの準備は万全、奥様やご子息方に見せられるように準備は整えてあります。予め伝えられておりましたので、配置をしておりました》
「そ、そうか……さすが俺の執事だ。ちなみにだが風兎、こうも騒いでいて問題はないのか? 神経質になるとかは……」
『私の仔というわけでもあるまい。托卵させているお前が何を言うか』
……風兎、独身だもんな。
そういう概念はあると思うが、結婚相手が欲しいかどうか聞いておくべきか?
まあ、それはまたいずれ、確かめておく必要があるかもしれない。
「それで、卵はどこに?」
『真・世界樹の中だ。あそこに集中する星脈の力によって、卵は孵化するための力を蓄えているのだ』
「それでもこんなに時間が掛かるって……どれだけエネルギーを吸ってたんだか」
『……それは同意だ。おそらくは獣神様が手ずから何かを仕掛けたのだろう。生まれてくる守護獣も、相当に優れた個体だろうな』
なるほど、つまりは当たり確定のガチャみたいなものか。
そっけない態度だったので、そんなサービスが付いているなんてまったく気付かなかったな……嗚呼、感謝します。
そんな卵を遠目で眺めてみると、渡した当初は真っ新だった卵に複雑な文様が浮かんでいるのが見て取れた。
「それであと数十分もしない内にあれが孵化するわけか……なるほどなるほど、ならバッチリ録画しておかないとな。ドローンを内部に送るのは可能か?」
《破損を覚悟するのであれば》
「背に腹は代えられない。少々高いが、作るのはいつでもできる。……やってくれ」
わりと製作に時間が掛かるドローンを代償に、貴重映像を確保することを選ぶ。
ついでに星脈の力を吸い上げるシステムとかも、分かればいいんだけどな。
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