虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
アリバイ作り その15
「第一案ですが……機械を造るのではなく、生むのはどうでしょうか?」
「生きている機械を生みだせと……理に反した難題を言うな」
「『超越者』とはそのような方々の集まりではないですか。現に、『錬金王』さん……先代のですが、もまた人造人間の作製に成功していますよ」
「錬金術とは、もともと完全な存在を錬成することを指す。その中には肉体や魂魄も含められていた……だが、機械は違う」
機械の定義とは、時代によって少しずつ変化していった。
だがどの時代においても、機械は手段であり他律的な存在だとされている。
「すでに『機械皇』さんは、魔力を生みだす機械の製作に成功していますよね? では、魂を入れる器もまた……可能ではありませんか? ヒントは深い、地下の底で見ました」
「……『暗躍街』か?」
「はい、そして『闇厄街』であり『案役街』であります。私が求める叡智は、おそらく三つ目の街にあるかと。ですが、アナタであればそれが無くとも可能なのでは?」
「…………」
たしかに神代の魔道具を使えば、魂に関する技術もすぐに得ることができるだろう。
だが、そんな正規な方法を無視する──それこそが『超越者』ではないだろうか?
「この世界では魂の観測が簡単です。それを機械に組み込めれば、『機械皇』さんであればできるはず……そうですよね?」
「…………」
「ですがそれを行わない、そうしない理由があるのでは? たとえば……『錬金王』さんがそうであったように、何かしらの罰則が与えられることを拒否している……とか」
「──」
あくまで『機械皇』は人形の体を使って話しているため、言葉に抑揚を出すことはできても表情に変化は無い。
しかし、だからこそ……いっさい変化しない表情から、驚きが漏れ出ているように感じられた。
「不老不死、死を拒む者であれば望むことです。しかし、それを成し得たモノはごくわずか……こればかりは、彼の『騎士王』であろうと行えていません」
「……それがどうした」
「いえ、私はすべての『超越者』と会っているわけではありませんので。ただ、実際に不老や不死な方がどれだけいるのか……今さらながら疑問に思いまして」
「それは……」
長寿や死ににくい、というのであれば種族という理由で大勢が該当するだろう。
だが完璧な不老や不死というのは、なかなか存在しない……それそのものが、生命という理に反しているからだ。
「──とりあえず、今回はここまでにしておきましょう。申し訳ありません、せっかく機会を作ってもらったというのに」
「…………」
「またいずれ。次に会う時には、しっかりとお土産を持ってきますよ……今回、忘れてしまいましたからね」
何も答えない『機械皇』に別れを告げ、転位でこの場から去る。
……そういえば、アリバイなんだからログアウトして時間を稼げばよかったな。
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