虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
アリバイ作り その10
アリバイ作りに必要な日数もまた、いっさい開示されていない。
終了は『SEBAS』が教えてくれるらしいので、一日目は『錬金王』の工房に用意された一室を借りてログアウトした。
そして翌日、『錬金王』たちからすればそれ以上の時間が過ぎたのちにログインする。
「『生者』が眠っている間に、私なりに使えそうな術式を用意してみた……どうだ?」
「これは……まさか、オリジナルですか?」
「さすがにそれは無理だ。あれを参考に、遠隔で錬金術を発動するのに最適な術式を刻んでみただけのこと。片手間でしかない」
術式の解析を『SEBAS』に任せる。
俺はそういう術式に関する情報は任せっきりなため、完全に理解できるわけじゃない。
しかしこれだけは分かる──片手間なんてレベルではないほど、術式は優れていた。
渡したのが地面に干渉して棘を生みだす術式だったため、『錬金王』が作ってくれた術式もまた同じように地面を錬成するものだ。
だが規模と精度が明らかに違う──なんとこれ、敵味方識別システム付きだった!
「い、いったいどうやってこのような術式を書き込んだのですか?」
「ん? ああ、それか。ゴーレムに刻む術式の応用だ。簡易版だからあまり完全とは言えないが、発動者の攻性魔力を当てられた相手にのみ攻撃するようにしてある」
「……はあ、ゴーレムでしたか。ただ錬成のみに注視していたため気づけませんでした」
「まあ、それでも刻むのは至難の業だがな。少なくともユリルに試させてみたが、まだできなかった……しばらくは緻密な術式を刻めるように、みっちり修業させる予定だ」
ユリルがこの場に居なかったのは、そのためだったのか……なんかごめん。
しかし、ゴーレムの術式か……カエンは星の力で超強化されたが元はゴーレム、きっと根本的な術式は残っているだろう。
「どうした、『生者』?」
「いえ、いい切っ掛けになったと思いましてね。一つのことに拘らない、ある程度自重を止める必要があるのですね」
「……前半はともかく、『生者』は自重した方がいいだろう。軽々と万能薬を作れるような腕の持ち主が、そんなことをしてしまえば戦争が起きかねん。──すでに『機械皇』の技術も学んでいるのだろう?」
「ええ、まあ……これからまた訊ねてみる予定でしたが」
旅の最後は決まっているのだが、その途中で行こうと思っていた。
アポを取る方法も分かっているし、そろそろやってもらおうか。
「……いろいろとあっただろう?」
「ええ、まあ……部屋中に機械を仕込まれたりはしましたね」
「それぐらいは歓迎程度だ。だが、二度目の来訪ともなれば扱いが変わる……」
「そ、そうなのですか」
まあ、最悪死ねば逃げられるだろうけど。
そういうことではないと、『錬金王』の目が物語っている。
「少なくとも、錬金術の腕は高めておいた方がよさそうだ。たしか、知識があればよかったのだったな」
「はい。万能薬を作ったのと同じ方法がありますので」
「そうか……ならば、少し強引ではあるが試してみようか」
そう言うと、『錬金王』はついて来いとどこかへ向かう。
……なぜだろうか、物凄くマッドな空気が漂っている気がする。
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