虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
アリバイ作り その03
伝えた通り、力が欲しくて訪れた。
二人はあっさりと協力してくれたので、すぐに始めることとなる。
「けどツクル、本当にできるの? 仙術ってそれなりに習得に時間がかかるんだよ。特にアタシの使うレベルの仙術はね」
「とりあえず見てくださいよ──『白雷』」
「うーん……できてはいるけど、まだまだ練りが足りないね。こう、グワンッと籠めてブバンッと放つ感じなんだよ」
「……あの、実際にやってもらえますか?」
天才肌の【仙王】は、教えることに向いていないようだ。
だが一度やってもらえれば、そこから何か分かることがあるだろう。
「うん、まあ……パンッとね。これで分かったかな?」
「え、ええ……なるほど、少し理解に時間が必要そうなので、異なる仙術を見せていただけないでしょうか?」
「それは別にいいけど……とりあえず、火属性の“灼凪嵬”とかからやってみるね」
凄まじい熱波を放つ【仙王】。
それで死に、『死天』によって凶悪な性能のアイテムを生成する能力が起動する。
さすがは【仙王】、生み出されるアイテムの質もずいぶんと高い。
俺は『SEBAS』の解析を待ち、次々と行われる仙術を観察する。
視界とその他解析用の装置によって、その全貌を暴く。
「お待たせしました──『灼凪嵬』です」
「うん、ちゃんと練り上げられてるね。これなら教えられる数が増えそうだよ。それじゃあ次、やっていくよ」
「お願いします」
水や風や土の他にも、凍らせたり転移したりする仙術も教えてくれる。
魔道具化した仙術と異なり、簡単に魔道具にできないだろうと思えるほど、複雑な工程になりそうだ。
「これは便利ですね──『飛転』」
そんな中、先ほど挙げた転移の仙術。
条件があるのだが、それでもある程度自由に好きな場所へ行くことができる。
それは自然が多い……というか、仙丹が少しでもある所だ。
「だいたいの場所には行けるよ。迷宮とか、アタシは知らないけど仙丹が無い場所には行けないからね」
「行ったことが無い場所でも、仙丹があれば問題ないのですか?」
「えっと、慣れない内はイメージが必要だから無理だね。けど、慣れれば行きたい場所を思い浮かべるだけで、それっぽい場所に行けるようになるよ」
仙丹さえあれば、ランダム転移もできるのか……座標指定をしなくとも移動できるのは便利だが、使い道を選びそうだ。
実際、これから会う『超越者』の場所へ向かうのは難しそうだし。
「それじゃあ、次はもっと難易度を挙げていこうか。身体強化系とか、どう?」
「とりあえず、全部お願いします」
「よーし、アタシに任せてね! ビシバシ教えてあげるから」
教わるというか、見取り稽古な気がするのだが……まあ、言わぬが花ってヤツだな。
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