虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
アリバイ作り その02
『──えっと、『超越者』の所へ行くってことでいいんだよな?』
《はい。行き先に特に指定はございません、旦那様の向かいたい場所へ向かっていただいて構いませんので》
なんて会話が、つい先日あった。
万能執事AIである『SEBAS』を信じている俺は、その日の内にしっかりとアポを取ってどの『超越者』の下を訪れるかを決めておいたのだ。
だが、それ以上を聞いていなかった。
具体的にその行動にどのような意味があるのか……うん、まったく見当が付かない。
「とりあえず──今は邂逅を喜ぶできなんでしょうね」
「い、いらっしゃい!」
「はい、お邪魔いたします……今回は、普通に挨拶なされるのですね?」
「……やらなきゃダメ?」
きっと、引き籠もり生活のときから経た経験によって、在り方を改めたのだろう。
そういえば非公式な来訪でも、少しずつ頻度を減らしていたっけ?
なぜか玉座から立ち上がった、仙人の王である少女にまずは頭を下げる。
「【仙王】様、急な連絡となってしまい誠に申し訳ありません」
「いいよ、気にしないで。それより、ツクルはどうしてここに来たの?」
「予めリーシーさんにもお伝えしておいたことですが、実はアリバイを作る必要がありまして……そのついでと言っては大変申し訳ないのですが、少しお二方に訊ねておきたいことを考え付きまして」
「──俺にもか」
そんな【仙王】の隣で立っていた『闘仙』さんにも、一度スッと頭を下げてから話に入り、本格的な説明を行う。
「仙術、そしてそれを用いた格闘術についてご鞭撻願いたいのです。見よう見まねでやってきましたが、そろそろ限界で……つい先日も、侵略者と遭遇した際に自身の手札の少なさを悔やみました」
「侵略者か……『生者』が全力で潰そうと思えば、簡単に倒せたのではないか?」
「いえ、そうではなく……侵略された個体の解放に手間取りまして。私は虚弱ではありますが、権能が凶悪です。そのため1か100かの選択を迫られてしまいます」
「ツクルって、そんなに強いんだ……」
いえいえ、【仙王】には及びません。
彼女と俺ではその1と100が発揮する威力が異なるため、前提が違う。
基本的に嵌め技ばっかりだし、他力本願でしか勝利できないんだよな。
「仙術は開発した魔道具によって再現できますし、武術も一度見せていただければそれなりに真似ることが可能です……とても厚かましい願いだとは承知しています、どうかお二方の力を見せていただけないでしょうか?」
せっかくなので、そんなツアーを始めることにした。
見せられる範囲であったとしても──確実に俺は強くなれるだろう。
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