虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

騎士国守護者 後篇



 グシャリと破壊されたボタンの残骸が、街の整備された地面にポロポロ落ちる。

 そして、光の粒子になるというゲーム的エフェクトによってスイッチは完全にこの世から消滅してしまった。

 この演出を何度も見たことがあるせいで、俺も『騎士王』もこの部分には特に何も感じなくなっている。

 潰されたボタンは諦めるとして、さっさと話の続きを聞くことにした。

「結局、守護者との契約そのものはどういう風にやるんだ?」

「契約に応じるだけの理性がある魔物へ、同意を求めて名を与えるだけだ」

「……そこだけ聞くと、簡単そうだな。本当にそれだけなのか?」

「やること、を訊かれればそれだけだぞ」

 ……つまり、それ以外のものはまだまだ何かが必要と言うことか。
 たとえば前提条件、先ほどまでの話で言えば神の加護が必要という部分だ。

 俺は獣の神から加護を受けているので、守護『獣』として魔物の契約できる。

 他の加護は……加護ではなく注目だったり死の神からの加護なので、守護者に仕立てるのは難しいだろう。

「あとはそうだな……守護者を配するに値する場所を用意することだな。地脈や龍脈の噴出点であったり、信仰を受けられるよう場所であったり。他には、守るべき存在が居るべき場所……であろうか?」

「守るべき存在が居るべき場所、か……」

「守護者、であるからな。理性を持っていた魔物の大半は、群れの主であることを自覚して理性を宿していた場合が多かったな」

「考えて動いていないと、群れを守ることもできなかったんだろう」

 風兎は聖獣からやってもらったらしいが、魔物を守ろうという意志があったが故に昇華できたのかもしれない。

 ……そういえば、風兎のそういう部分を訊いたことがなかったな。

「…………『生者』、聞いているか?」

「ああ、悪い悪い。ちょっと知っている守護者について考えていたんだ。結局の所、そっちにはどんな守護者が居るんだ?」

「猪や竜、あとは犬頭鬼コボルトなどが居るな。群れの主と言っていたのは、一番最後のヤツだ」

「コボルト……ああ、そっちにも居たんだ」

 最後の部分は『騎士王』に聞こえないようボソリと呟く。
 イベント世界から向かえる妖精族の隠れ里には、彼らの隠れ住む場所もあるのだ。

「結局の所、守護者は直接的に力を貸してくれるわけではない。互いに守るべきモノがあり、そのために手を組んでいるだけだ。私も歴代の『騎士王』も、彼らに命令を下すことはめったにないのだぞ」

「……ぽっと出の『超越者』候補にはサクッと命令を出したのにな」

 嫌味がましく過去の話を持ち出すが……ニヤリと笑う『騎士王』には、まったく通じていないようである。

 ため息を小さく零し、せめてもの抗いとして情報収集に勤しむ俺だった。


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