虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大森林 その17



 アニワス

「──以上が、事の顛末です。聖獣様にお目通りはしませんでしたが、おそらく事態は終息していくと思われます」

 獣人国へ帰還し、情報を報告する。
 残念なことに風兎について情報を知ることはできなかったものの、森獣のデータはある程度収集できたのでよしとした。

「おう、ご苦労だったな」
「侵略者か……厄介なことだ」

「侵略者が結界内に侵入していたことに関して、疑問が残っています。お二方、そちらに関して調べてはいただけませんか?」

「ああ、こちらでやっておこう。聖獣様の西域へ侵入する手管を持っているというのであれば、これまでは安全だと思われていた聖域や秘境にも侵略者が現れるかもしれん。すぐにこの情報を調べる必要があるな」

 情報とは、あくまで侵略者のことだ。
 俺の調べてすべての情報を提供するとなれば、侵略者の能力を手に入れた俺そのもののことまで言わなければならないからな。

「そして、『超越者』と【帝王】たちで一度話し合う必要がある……『生者』、お前もその会談に参加するか?」

「いえ、遠慮しておきましょう。私は公式的な『超越者』ではありませんし、王や皇帝のような立場ではありませんので」

「……『超越者』であるのだから、条件は満たしているだろう」
「そうそう、細かいことなんてどうでもいいから参加しろよ」

「……やはり遠慮しておきます。そのような場に休人……いえ、星渡りの民は必要ないでしょうし。この世界のことはこの世界の民が決めることです」

 面倒臭いったらありゃしない。
 そこに行って生まれるものなど、新たな確執と面倒事しかないだろう。

 ただでさえ、数人の王と皇帝と関係を築いてしまっている……今さらなんだよな。

「──ともかくです。今回私は、報酬を目当てに調査を代行した代理人です。報告を済ませた時点で一時的に関係性は断たれました。報酬を受け取り、すみやかにこの場から立ち去ることが適切な行動かと」

「望むのであれば、より多くの財を与えることもできるが?」

「…………いえ、遠慮しておきます。それよりも宝物庫の閲覧許可を頂きたい」

「少し間が開いたな。よし、俺の権限でそれはくれてやる。いいよな?」

 そう【獣王】が『覇獸』はうぐぐと唸りながらも渋々許可をくれた。

 もう少し粘りたかったんだろうが、ここで話が止まってしまったからそんな風に声を出しているんだろうな。

「──これでいい。連座した許可証ではあるが、今回限りのモノだと思え」

「ありがとうございます。使用に関しても一部許可まで頂けたのですね」

「それだけのことを、成し得ている……ただそれだけだ」
「まあ、お疲れ様ってことだ。何を隠しているかは知らないが、好きに楽しんで来い。やらかしたら弁償だけどな」

「あははは、肝に銘じておきましょう」

 こうして俺は、獣人国が保有する魔道具や武具を解析する許可を得たのだった。


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