虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大森林 その09
「あちゃー、やっぱりダメだったか」
大地を融かし、ガラスを生みだすほどの高火力を実現した陽光による一撃。
本来、生物の枠にある存在であれば、どのような存在であれ屠れるはずの天の裁き……そのはずだった。
「肉の体を放棄して、壁として使ったか。魔物には特殊なスキルもあるし、それを使えば物理法則も歪められるみたいだし」
ソルロンは俺が『SEBAS』と共に造り上げたシステムだ。
特殊な装置を積んだドローンを天まで飛ばし、太陽光だけで活動できるようにした。
それを『SEBAS』の起動コマンドに合わせて動かし、チャージしていた陽光を集束させて放つ……とまあ、要するに科学的に生みだしたモノである。
そのため、魔力的な事柄がいっさい関わっておらず物理現象に則った攻撃なのだ。
プラスな面は魔力に対する防御手段を取ろうと防げないこと、マイナスな点は魔力を用いた物理防御手段に弱いこと。
──だからこそ、侵略者たちの肉壁+魔法による防御によってギリギリ防がれてしまったわけだ。
「『SEBAS』、あくまでアイテムそのものじゃないとダメみたいだぞ」
《データに書き加えておきます。では、次のプランに移行してください》
「了解っと」
すでに計画を立てている。
相手を生かした状態で解放すると言う面倒なことは、さすがに俺独りでやれるようなことでもない。
万能執事『SEBAS』による、プランAは失敗してしまった。
これなら侵略者か森獣かを識別して攻撃ができるので簡単だったのだが……仕方ない、多少のダメージは我慢してもらおう。
「[称号]変更──『侵略者の天敵』。『魔王の取腕』、細胞を『覇獸』100%、結界再現──『闘仙』」
プランBは実力行使だ。
ただ、本気で殲滅するのではなく、先ほどの風兎の力を使ったときと同様、あくまで俺の力だけでどうにかするといったもの。
違いは簡単──『SEBAS』がサポートしてくれるかどうか、である。
「行きますか──“風兎”+『天閃腕』」
二つの力を掛け合わせ、より強大な力を生みだす……なんて謳い文句も、正しい組み合わせを見つけなければ使えない。
俺にはできないことだが、『SEBAS』ならできる──風を纏った腕を横に薙ぐ。
その真空の刃を放つだけだったそれは、風兎の力を纏うことで大きく変化した。
荒れ狂う暴風が侵略者たちを吹き散らし、逃げ場のない風の牢獄へ閉じ込めていく。
回転される魔物の肉体は、少しずつ細切れになっていく……さながらミキサーを見ている気分になるな。
──モザイク必須な光景だよ。
コメント