虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大森林 その08


 調査の結果、やはり:DIY:の全能性が証明された。
 俺が:DIY:を使い関わったアイテムは、侵略者たちによく効いたそうだ。

「それで、生きた存在を解放するには?」

《『死天』のアイテムの内、回復系統に属するアイテムを用いれば可能となります。ただし、抵抗がございますので極限まで弱らせなければなりません》

「本当はルリの役目だったと……もしくは、壊す的な意味で『破天』だったか?」

《現状では判明できませんが、奥様であれば間違いなくできたかと》

 ああ、うん……そこは疑っていない。
 心の底からルリがそれを望めば、何かしらの超常的な存在が、その未来をどこからか引き寄せてそうしてくれるだろうさ。

「ルリだもんな……さて、マーキングしておいてある。追跡してくれるか?」 

《畏まりました。ルートを案内します》

 俺もそうだが、休人はやり直しが効く。

 侵略者は休人を殺しても、その肉体を侵略することはできない……神が創造した肉体という設定だからか、それとも何か非対応な免疫システムでもあるのかは謎だが。

 なので、考えが浮かばない現状において、愚直ではあるが突っ込むのが最適解なのだ。

 トライ&エラーを繰り返し、成功したという未来さえ得られればいい……過程なんて、必要じゃない。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 必要ではないが、できるなら楽に終わらせたかった。

 だが現実は俺に厳しいらしく、常在戦場というか常時死亡というか……死にまくっているのが現状である。

「なに、あれ……群れるの?」

《旦那様が侵略者たちを屠り続けたことで、彼らの本能が徒党を組むことを学習したのでしょう》

「……そういうの、あるんだ」

 狂ったように暴れ回るのではなく、数の力で質で上回る存在を倒す……やれやれ、数でも質でも圧倒的に優っているのだから、前者であり続けてほしかったな。

「鹿に加え、大量の侵略者入りの魔物たち。対して相手はクソ雑魚サンドバック……絶体絶命って言葉でも表現できないピンチだな」

 俺が追いかけていたのは森獣である鹿だ。
 一度目の邂逅でGPS的な装置を仕込み、ドローンで追跡することで居場所を割りだした……そこまでは良かったんだよ。

 だが鹿を見つけたとき、周囲には大量の侵略者入りの魔物たちが居た。

 種族問わず、弱者強者も関係ない……自分たち以外の存在すべてを殺し尽くすため、被るまものの関係性を気にせず集まっていたのだ。

「対策は分かっているし──ソルロンを」

《畏まりました──照射開始》

 天から降り注ぐ細く絞られた光。
 一本一本が侵略者に触れると、燃やすというレベルではなく──消し去る。

 森獣以外はすでに死んでいる……ならば解放してやるのが、非力な人族ができる最大限の弔いなのかもしれないな。


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