虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大森林 その06



「なんちゃって──『疾駆』」

 かつて【獣王】が使っていた技の一つ。
 瞬間的に脚力を強化し、地面を割る勢いで相手へ向かうというもの。

「加えて──『地裂脚』」

 同じくして、『闘仙』が使う仙術(物理)の一つを重ねて行使する。

 ただ地面にヘコみが……というレベルを超え、大地が明確に裂けるほどの推進力を以って前へ進む。

「多い、多い、多いんだよぉおお!」

 川に集まってきた膨大な数の侵略者。

 いったいどこに隠れていたのか……そう思えるほどに大集合したソレは、それぞれかつて見た侵略者同様、口では語りづらい不気味な体を動かし──魔物の死体へ入っていく。

「落ちろ、墜ちろ……堕ちてくれよ!」

 全力で逃げたうえ、餌として撒いておいた死体ごと侵略者たちを地の底へ沈める。

 飛行系の魔物は全部片付けていたので、魔物を侵略しようと足掻くことはできない……そう思っていた。

「侵略者、だもんな……そうなるのかよ」

 自己進化、あるいは魔改造。
 種の理から外れたソレは、魔物の肉体に強制的な変化を行わせ先へと進んでいく。

 歪な翼や不自然な脚、それらが機能すると魔物たちは宙で停滞し──戻ってくる。

「させるか──『墜落死』!」

 小さなスコップを投擲し、大量に居る侵略者入りの魔物の一体に突き刺す。
 上に浮上しようとしていたソレは、スコップを突き刺された途端に真っ逆さまに地中へ墜ちていく。

 そしてそれは、他の者たちも同様……まるで浮かび方を忘れたかのように、周囲の侵略者たちもまた落下していった。

 墜落死をもたらすスコップ、その機能は落ちる穴を生むのではなく──因果を生む。

 地面に刺せば穴が生まれるが、落としたい対象に刺せば、墜落するという因果そのものが対象をどこかへ落とす。

 俺がこれを手に入れたのが、少しジャンプしていた時だったからだろうな。

「よしよし、あとは……これだ」

 大地の罅に向け、小さな球体を抛り込む。
 うじゃうじゃと居た魔物(in侵略者)だが──その中心地で、閃光が弾ける。

「『成仏の燐光』、触れたら即浄化だ」

 聖職者が行う浄化。
 それに巻き込まれた際に入手したアイテムだが、アンデッド特攻となっている。

 もともと光を封じた球状だったそれを改良し、光の粒として放たれるようにした。

「これでダメなら、もうどうしようもないんだが……さすがに効いたみたいだな」

 凄まじい勢いで[ログ]が更新される。
 細かい部分は把握しきれないが、侵略者っぽい名称の存在を倒せたという文面が記されていた。

 倒すために浄化の力を使うのは有効的……この情報が何かの役に立てばいいんだが。


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