虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大森林 その05
原因が判明した。
侵略者っぽい体組織が、回収したサンプルの中から発見されたそうだ。
世界ではなく個人を侵略するソレは、侵入した対象のすべてを喰らう。
「一度侵略されると、凄まじい速度で体を内側から食い潰されてそのまま死ぬ。だが死体は侵略者が有効的に活用する……強い相手だと、物凄く時間が掛かるみたいだな」
完全に侵略された存在は、狂化されたうえ魔改造を施されて野に解き放たれる。
他の魔物を殺し、別の侵略者が侵略できる苗床を生みだすのだ。
「既存のポーションは通用せず、現在抽出した侵略者の情報を基に作成中の特製ワクチンが無ければ治すことができない……『薬毒』さんは別として」
あの人であれば、きっと正攻法でやり遂げたに違いない。
それができる権能を、あの人はその身に宿しているのだから。
だが彼は一人しかいないし、闇厄街で別れてから一度も会えずにいる。
今回偶然ここに来ている、なんてご都合主義は俺には与えられていない。
「完全に侵略される前なら、全身に衝撃を与えればそれで死ぬ。寄生虫みたいな侵略者だから、すぐに倒せる」
それこそ素の俺でも可能だ。
称号『貧弱な武力』によって確実に固定ダメージを1与えられるため、全身にダメージ判定を行わせるだけで討伐可能だ。
「実験は成功済み。排除後であれば即座にエリクサーを振りかければ回復する。おそらく蘇生薬も機能すると思われる」
アイプスルにもそういうことを試す場所が用意されており、『SEBAS』の持つ肉体がそこで実験を繰り返している。
同時作業は当たり前の万能執事なので、細かいことは気にしない。
「そろそろ始めるか……電気の反応で、もうバレているだろうし」
そりゃあ突然生命反応が減れば、単純な寄生生物でもこちらへやってくるだろう。
なぜならそこには大量の新鮮な死骸が置かれ、どれにも手を付け放題なんだから。
「電気が痺れさせるのが得策か? だが、あの鹿の森獣みたいな奴がいるならどうせ意味がないのか……どうするべきか」
当たって砕けろ、という作戦も圧倒的強者である森獣たちには及ばない。
それは風兎の力を借りている俺にとって、当たり前すぎる……その風兎が、強すぎて困るほどだからな。
「しかし、侵略者がわざわざこの森に来たのか……聖獣が欲しかったって可能性が高いけど、それでも結界を潜り抜けるなんて面倒臭い過程を経てでもやりたいことなのか?」
本能的な部分がそうさせた、というのならばどうしようもないんだけどさ。
喰らうことで何かしらの恩恵が侵略者たちにあるのならば、分かるのだが……あやかるのは喰った個体だけだろうに。
「こればかりは、誰も知らないだろう」
──少なくとも、現在侵略者たちと対話ができたという例はゼロだからな。
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