虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大森林 その04
N6W6
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鹿? ……うん、ダメだったよ。
魔道具化する実験に関しては、それなりに情報を得ることができた。
しかし鹿を救うにも、具体的にどうすればよいのかが分かっていない現状なので、いくつかできることを試してから撤退を選ぶ。
「ここは……川があるのか?」
フィールドを彷徨っていると、せせらぎの音がどこからか聞こえてきた。
なんだか先ほどまで殺伐とした戦いを京セさせられていたせいか、その反動で音を聞いただけでとてもリラックスできる。
「音を頼りに行ってみれば、とりあえず辿り着けるか……いや、これがあったな」
全休人に与えられた権能──[マップ]を起動して周囲を探ってみる。
レムリア世界とは違い、聖獣の領域であろうとちゃんと地図として表示された。
「川はこっちで、現在位置はこれか。目的地の方は……あっ、こっちはダメなのか」
先ほどの訂正だが、中心地であり聖獣が住む『N7W5』は表示されない。
ドローンの派遣をしていないから、というのも理由の一つだが……境界線でもあるかのように正方形の空白が存在している。
視界に収めた範囲ぐらいは表示されるのが本来の[マップ]機能……しかし結界が存在する場所においては、見ても分からないような設定になっているらしい。
まあ、見て把握できてしまうなら座標も丸分かりでどんな場所だろうと侵入で来てしまうからな。
俺は無いが、対応するスキルがあれば新機能が[メニュー]のどこかに増えるらしい。
閑話休題
「──うわぁ……」
川は綺麗な場所だと錯覚していた俺が愚かだったのだろう。
木々が普通だったから、てっきり何も問題ないと考えていたが……待ち受けていたのはどす黒い濁流だった。
「出番だ」
《ご指示を》
「水のサンプルを送る。だからこれの解析を頼──ッ!」
水を掬い、『SEBAS』の下へ送り届けようとしたところ……俺の体を捕まえるように水でできた鞭が足を縛り、そのまま水の中へ引き摺り込む。
(こういうときって、音声識別の能力が使えなくなるんだよな──【仙王】)
冷静に、準備を整え仙丹を練る。
虚弱な俺が強くなる方法を、一つだけしか持ち合わせていないということもなく──真空状態だろうと使用可能なように、常日頃から改良を重ねているのだ。
(というわけで発動──仙術『白雷』)
青白い稲妻が天から川全体に伝わる。
某電気ネズミのボルト数なんて可愛く思えるほど、解き放たれたソレは超高電圧だっただろう。
「……さて、仮死状態にできたな」
すべては作戦通り、ついでにサンプルの回収にも成功した。
あとはこれを『SEBAS』に丸投げし、解決策を教えてもらうだけだ!
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