虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
VSルリ騎士団 前篇
「お布施は……これくらいかな?」
「多すぎますよ」
「愛する妻が居る教会なんですよ。どれだけ金を積もうと私が後悔することはないです」
「ハァ、そうですか……」
呆れられようが、それはただの事実。
さすがに直接ルリに払うこともできないので、ポケットマネーとして持ち歩いている金銭の二割ほどを注ぎ込んでおく。
数千万とかいう額になっているけど、教会のステンドグラスを張り直すだけでもそれなりに額が必要って聞いたことがあるし……とりあえず、それぐらいは払っておいた。
「さて、この後妻は何をするのですか?」
「この後はたしか、騎士たちへ鼓舞も兼ねた模擬戦の観戦がありました。そちらもご覧になりますか?」
「ええ、ぜひお願いします」
男が居たら殲滅だが、ルリ曰く女騎士からのくっころ狙いらしいので心配はない。
ルリって、男女問わず人気があるのでそういったことになる心配はあるが……そこまで嫉妬するのはどうかと思うし平静さを保つ。
──観ているだけだから、最悪結界で包んだ状態を『SEBAS』に操作してもらえばどうにかなるだろう。
◆ □ ◆ □ ◆
結界の出番はすぐに訪れた。
俺は現在、数十人の騎士に囲まれ武器を構えられている。
全力の殺気は俺を幾数回も殺し、死因はアイテムとして作り変えられていく。
どうしてこうなったか? その答えは目の前にあって──
「頑張って~」
一人称を言わず、応援してくれる愛する妻のため、俺は彼らと戦うことになった。
過去を遡る必要もなく、シンプルにそんな妻が仕組んだことだ。
たまたま現れた観戦者と、騎士たちへご褒美を与えたいと言う教祖様。
頑張った人にはよりいい景品がなんて言えば……真面目そうな騎士長であろうと、一般人を殺して手柄を得ようとするまでに狂化してしまう。
「では、よろしくお願いします」
「あなたには悪いですが、教祖様の願いを訊き受けることこそが私たちの使命です」
「分かっています。──精々足掻いて楽しませてください。教祖様を満足させると言うのであれば、私にもやりがいがありますので」
『──ッ!』
今さらだが、くっころさんはこの場に居らずルリの隣で頭を悩ませている。
実力を知っているうえで、これから起きることになんとなく予想が付いてしまっているからだろう。
そんなくっころさんの隣で微笑んでいる我妻は、楽しそうに手の上げ──振り下ろす。
「ふぁいっ!」
瞬間、騎士たちがいっせいに我先にと鼻先にぶら下がった人参こと俺に向かって吶喊してくる。
それだけで死んでいるので、実際にご褒美が貰えるのなら一番大きな声を出した人だなと思いつつ──告げた。
「『闘仙』──『地裂脚』」
そして、地面が一気に割れる。
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