虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
奴隷王との交渉 前篇
「ふむ、信頼か……貴殿は妾の信頼を得て、何をしてほしいと言うのだ?」
「そこまで難しいことではありませんよ。奴隷たちに、私が提供するアイテムの検証体としての役割を果たしてもらおうかと」
「実験、というわけじゃな。この光線銃もまた、その一環というわけか?」
さすがに説明が足りないため、とてつもなく悪役っぽい言い方になってしまう。
そのため【奴隷王】も自分の奴隷たちを守るため、殺気を放って脅してくる。
「ああ、もちろん強い悪影響が発生するようなモノは使用しません。たとえ何かあるのであれば、こちら側で責任を持って処理させていただきます」
「処理だと?」
「……訂正しましょう。こちらの治療薬で治すという意味です」
「これは……もしや、万能薬では?」
まあ、これがあれば大抵の状態異常を解消することができるので、それを使った拷問も考えられているらしいな。
実験でどれだけ問題を起こそうと、すぐに治すことができるわけで……。
奴隷たちにもしもの事態が起きた場合に使う薬を取りだし、【奴隷王】に奴隷を介してそれが渡った。
「そこまでして、貴殿は何がしたい?」
「さて、どうなんでしょう? 私とて、ただ目的もなくこのように貴重なアイテムを使うわけではありません。あくまで、それを使うことになるのは初期のみでしょう。状態異常に関するアイテムも被験していただくので」
「しかし、万能薬か……そんな神話に語られるような品を、妾の奴隷に使わせられるだけの余裕が──貴殿にはあるのだな?」
奴隷にレアアイテムを、なんて考え方は本来ありえないわけで……。
なので【奴隷王】は、万能薬が腐るほどあることに僅かながらに気づいたようだ。
「ここはシンプルに肯定しておきましょう。すでに地上で『錬金王』さんと交渉を済ませていますので、ある程度ストックを分けていただけるのです」
「なるほど、錬金特化の『超越者』であったか……錬金術の理外者ともなれば、同じく理外の品も容易く生みだせるわけじゃな?」
「そういうことです。ある程度こちらで用意した被検体に試させますが、やはり実際に使うのは人族がメインです。【奴隷王】様の奴隷たちに使っていただきたいのです」
ここには大量の人材が居る。
彼らは奴隷という立場なので、主の命令には逆らえない──たとえ薬の影響で暴走しようと、奴隷はある程度行動の制限を設ければ動きを止めることができるわけだし。
「して、妾がこの申し出を受け入れる利益は何なのじゃ? まさか、この万能薬を貰えるだけ……というわけでもなかろう」
「もちろんその通りですよ。むしろ、条件さえ受けていただければ、被験するアイテムとセットで毎回お届けしますよ」
「……そこまでか。分かった分かった、妾の負けじゃからとっとと内容を言え」
さすがに無限万能薬には、【奴隷王】も呆れて思考を放棄してくれた。
あとは細かい部分を交渉し、取り付けるだけだ──うん、まあ殺す気は無いんだよな。
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