虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
旋極会 中篇
若頭は話が分かる男だった。
すぐにソレが何を意味するのかを察し、どこかに連絡すると【奴隷王】に会わせると案内してくれる。
「……そうか、アンタが『生者』か。うわさは聞いてるぜ、ずいぶんとまあ他の領域を荒らし回ったらしいな」
「なんのことでしょうか? 私はただ、この街を歩いていただけですよ」
「なら、アンタは歩く禍福だな。うちの頭にもたらすのは、幸福なのか災いなのか……」
「そのような力は無いのですが……もし有ったならば、きっと正しいことをしている者には幸福をもたらすようにするでしょうね」
それぞれ自分なりの笑顔を浮かべてトークしているのだが、なぜか他のチンピラたちはゾッとして離れた場所へ移動していく。
強面な方々は……あっ、視線を合わそうとするとすぐに逸らす。
「まあいい、そろそろ頭の部屋だ。長ぇ渡り廊下を渡ったらそこに居る」
「渡り廊下? なぜそのような物が」
「さぁな、俺にはさっぱり分かんねぇ」
嘘は吐いていないと『SEBAS』が教えてくれるので、どうやら彼は本当に知らないようだ……まあ、奥に居る本人に訊けば分かるかもしれないだろう。
「ほら、そこだ……くれぐれも、変な気は起こすんじゃねぇぞ」
「? はい、分かりました」
なんのことだか分からないが、とりあえず了承しておく……変な気って、いったいどういうことなんだろうか?
◆ □ ◆ □ ◆
渡り廊下を進んでいくと、そこには使役されたのであろう奴隷たちが敷かれたカーペットの傍で頭を下げて待ち受けていた。
しかし、誰も彼もが性別が女……人外も含めて、全員がそうだ。
「変な気ってそういうことか? ここで手を出したら殺される……的な」
《…………》
「……大丈夫か?」
《申し訳ございません、旦那様。少し不可解な点がございまして。答えが出ておらず、完璧な情報ではございませんが……》
その仮説を『SEBAS』から聞き、とりあえず悩んでいる理由を察する。
これまでにも似たような違和感を感じたことはあるが、たしかにそうなんだよな……。
「とは言っても、行くしかないからな。最悪遠隔で爆破してもらってでも死ねば、どうにか逃げることができる」
《プレイヤーを奴隷とする技術が完成していた場合、死に戻りでは対処できなくなるかもしれません。お気を付けてください》
「まあ、そっちの方は策を用意してあるからいいんだが……問題は使役された時の思考がどうなるか、だよな」
策が有っても、考えて実行することができなければどうしようもない。
最悪の結果だけは避けたい……俺の予定通りに事が進んでくれればいいんだけど。
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