虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
旋極会 前篇
とりあえず、ビルの中に入ったのだが……一階で待ち受けていたのは──チンピラだ。
「ごめんください」
「あぁん、なんじゃわれぇ!」
「【奴隷王】様に会いたくて来ました。ここに居ますか?」
「なんのことだぁ? いいかぁ、ここは泣く子も黙る『旋極会』の本部じゃぞ!?」
名前にいろいろとツッコみたかったが、相手がどういう反応をするのか分からないのでとりあえず冷静に。
「『旋極会』ですか……あの、本社ということは偉い方が居るのですか?」
「だったらどぉしたぁ」
「貢物がしたいので、どうか会わせてはいただけないでしょうか? ──こういった品なのですが……」
「こ、これは……おい、テメェいったいどこで手に入れた!」
俺が差しだした物を見て、チンピラは唾を飛ばす勢いで詰問してくる。
おいおい、唾で死んでいるから勘弁してくれよ……死んだら俺から情報を取るのは不可能になるぜ?
「知りたければ、会わせてください」
「ぐぅ……」
「ありがとうございます。では、さっそくご案内してください」
「わ、分かってんよ!」
入口に居たのは彼だけだ。
チンピラは二階へ向かい、そこに居た数人のチンピラたちに声を掛ける。
どうやら上に行く役割を、他の奴に押し付けようとしているみたいだな。
「──ざけんじゃねぇよ! 新入り、テメェが連れてきたんだ、テメェがケツまで責任を取んのが筋ってもんだろうが!」
「う、うっす」
「ったく、面倒かけんじゃねぇよ! ……ほらっ、行っていいからさっさと行け!」
「わ、分かりました!」
彼は下っ端だったのか。
だから下で見張りをさせられていたと……自分が組織の仲間入りができたってことで、自信が湧いてきたんだろうな。
「おい、早く行くぞ!」
「分かりました」
そんなこんなで、彼らの間を通って会談ではなくエレベーターを使う。
外から見れば五階建てのビルだが、どうやら地下があったようで……『B1』のボタンに手を載せ、地下へ向かっていく。
◆ □ ◆ □ ◆
チンッという軽快な音とともに、俺たちは地下へ辿り着いた。
開いた瞬間そこには大量の強面な方々がスタンバイしており、あのチンピラたちも見張りだったのかと察する。
二段構えというか、三段構えというか……いずれにせよ、『旋極会』とやらの正式な構成員はこちらの者たちだろう。
「『サグ』! テメェなんでここに来た!」
「わ、若頭……じ、実はこの男がこれを持って来まして……」
「! ……テメェ、なんでこれを持ってる」
俺を案内してきたチンピラは、サグという名前みたいだな。
そんな彼を怒鳴りつけた男──若頭は、彼が見せた俺のお土産を見て睨み付ける対象を変えた。
……だから、それで死ぬんだよ。
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