虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
再びの地下街
暗躍街
久しぶりに地下に向かってみた。
あまり変わっていないようだが、やはり俺が介入したせいで英雄の行動が成功したことが影響したのかもしれない。
少なくとも人々から餓えに関する感情は消え、腹が満たされたことで餓死するような者はいなくなった……だが、そうなると別の欲が強まる者も居るのだ。
「これで十回目……そんなに俺は簡単な相手に見られているのか」
《【革命英雄】によって、食欲が満たされた影響でしょう》
「そうなんだよな……美味い物を複製していないのは幸いだった。もしそこまでしていたら、本当に不味かったかもしれない」
《料理店が軒並み潰れ、路頭に迷う者が出ていたかもしれません。複製に制限を設けた旦那様のアイデアは、やはり間違っていませんでしたね》
俺はいかにも虚弱そうなため、子供から老人まで手癖の悪い者たちが次々と手を伸ばしてアイテムを盗もうとしている。
そしてその度に、俺のアイテムから石ころが失われ──町へ投げ入れられていた。
「でもまあ、物欲なだけまだマシか。この街のどこかで他の欲を満たそうとしている奴がいるだろうし」
《それに関しては問題ないかと。この街は神代魔道具であり、特定のエリア以外では犯罪行為は許されません。窃盗はともかく、交渉は強制追放となります》
「窃盗はセーフなんだ。まあ、それでも大切なモノが奪われないんだからマシなのか」
娼館などではちゃんとヤりたければヤれるようなので、溜まった者たちはそこを利用するらしい……英雄が食欲を満たしたことで、売り上げが向上したんだとか。
「前は行かなかった場所まで行くか。確認しておくが、反応は掴めるか?」
《可能です。しかし、それで向かえるのであればとっくに発見されているかと》
「『SEBAS』にしか分からない、ってわけでもないからな。【情報王】なんて、どうにかして掴みたい情報だからな」
あの人、ガチで情報狂な気があるし。
知らざるは罪、情報を知る者がすべてを征する……みたいな感じだからな。
「とりあえず、残っている領域はなんだったか? タクマのとこにも行ってなかったが、あそこは中立地帯だったな」
《【奴隷王】、【非業商人】の領域ですね。【奴隷王】の領域では奴隷販売店や娼館などが立ち並んでおり、【非業商人】の領域ではあらゆる品が高額で取引されております》
「奴隷と娼館はあんまり興味がないし、先に済ませておく方がいいか? 金ならいくらでもあるから、【非業商人】の領域には長くなりそうだ」
先日のタクマとの会話とは異なり、お金の心配をする必要が無いこの世界。
もしルリだったなら……どっちでも、好きなだけお金を用意できたのにな。
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