虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第三の地下街



 情報と言えば拓真、拓真と言えば情報ということで──さっそく訊いてみた。

「…………ハァ」

「おい、なんだそのため息は」

「人がやっとこさ掴んだ情報を、根こそぎ台無しにするような奴に飽きれただけだ。なんでもう行ってんだよ。誰も知らない世界だから、遺失になってんだろうが」

 どうやら拓真も拓真で、遺失世界の情報を掴んでいたようだ。

 そして今日、それを無知な俺にご教授してやろうと……考えていたようだが、無恥な拓真が反撃を受けたらしい。

「移動条件は秘密、向かえる場所は幽源世界レムリアだ」

「レムリアねぇ……仮想の大陸とまったく同じ名前だと。なら、他にはアトランティスとかあるんじゃねぇのか?」

「そうかもな。少なくとも情報通な奴に訊いてみたら、統一世界……たぶんムー大陸っぽいヤツの存在を確認したからな」

「おまっ、マジかよ……!」

 あとでネットで調べた見たところ、ムー大陸に関する情報と『騎士王』が話していたことに関連性があった。

 なのでおそらく、統一世界とはムー大陸の伝承を基に生みだされたのだろう。

「それで、拓真の情報ってのは?」

「なんか、負けた気がするな……まあいい、俺が見つけたのは遺失世界そのものに関する情報だ。俺が活動している場所、どこだか覚えているか?」

「忘れるわけないだろ。暗躍街だろ、地下にある神代魔道具の中にある」

 あそこでさまざまな強者に会った。
 お蔭で俺個人や『生者』の権能、さらに言えば【魔王】からパクった細胞の力まで格段に成長した気がする。

「まあそうなんだが、これを調べようとした理由が暗躍街にあるんだ……いや、正確にはアンヤク街にあるんだ」

「二つ目は違う字ってことか? なら、闇に厄って書いて闇厄街か?」

 あそこなら言ったことがあるが、何か重要な秘密が隠されていたのだろうか?
 だが拓真は首を横に振り、まだある話の続きを語る。

「それでもない。まだ街に住む誰も言ったことのない第三の街──案内の案に役って書いて『案役街』ってのがあるらしい」

「まだあったのか……それで、そこに何があるんだ?」

「話は最後まで聞けよ。パソコンで言えばメインサーバーみたいなそこは、例えるなら仮想空間みたいな場所らしい。そこを支配すれば暗躍街も闇厄街も思うがまま……だからそれぞれ、そこを目指している」

「で、この話の流れからすると、そこに遺失世界に関する情報があると」

 どういうルートでそんな情報が伝わってくるのかまったく見当が付かないが……拓真が優秀ってことで纏めておこう。

「そういうことだ。これ以上は有料になるんだが……訊くか?」

「EHOの中でならな」

 現実でお金を払うのを渋っているからじゃないんだぞ……ただ、VR機の購入で余裕が無いだけなんだ。


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