虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
幻想の世界
始まりの街
よくある、主人公の知らない場所で暗躍するアレ……ちゃんと気づいていれば、後のイベントで悪影響を及ぼさないのに。
そんなことを昔から思っていたので、立ち去った後も『SEBAS』を残しておいた。
するとそのあと、レムリアに住まう存在を確認したらしい。
何が出現の条件か分かっていないので、まだ接触はしていないようだが……とりあえず俺が居ると、出てこないのはたしかだな。
「と、いうわけで──『レムリア』って何か知らないか?」
「うむ、さっぱり分からん!」
「……そうか、ならもういいや。串の代金は払っておくから、もう帰っていいぞ」
「ま、待ってくれ! そう簡単に見捨てないでくれ! 逃がさんぞ、絶対に離さない!」
恥も外聞も捨て、必死にしがみついてくる『騎士王』……結界があるので、どちらも露見はしないんだけどさ。
なお、特に柔らかい感触などはない……むしろ何も感じない(痛覚を消したから)。
「……なんだか嫌な視線を向けられた気がするな。『生者』、心当たりはあるか?」
「いえ、ありませんよ。それよりその手を放してください、さっさと帰りたいんです」
「……中途半端な敬語を使うな。逃がさないと言っただろう。特に思いだすことは無いのだが、それは『遺失世界』の一つか?」
「遺失世界?」
なんだか新ワードが出てきたな。
遺失ってことは、すでに失われているって意味だし……そういうことなのだろう。
「レムリアではないが、似たような異なる世界の話を聞いたことがある。理そのものが異質であり、外界との接点を失い存在を幻想と化してしまった世界のことだ」
「そうだな。レムリアは幽源世界と言って、そこにあるモノはすべて霊体となる。俺もそこに居る間はそうなっていた」
「ほぅ、それは面白そうだな。……ただ、さすがに行くことはできないだろう」
当然ながら、『円卓の騎士』が全力で阻むだろうし、たしかにほぼ不可能だ。
全力全開で包囲網を突破しようと思えばそれもできるだろうが、さすがにそこまでして逃げようとは思っていないだろうし。
「それで、遺失世界の情報ってのは?」
「うむ。統一世界と呼ばれる場所でな、帝王によって宗教やら文明やらがすべて統一された世界という話だ」
「統一世界ねぇ……世界の規模が分からないから上手く言えないが、そんなに凄いことなのか?」
「凄いことだぞ。あらゆる人種を束ね、一つの国として纏め上げたのだからな。ただ、それは不可能に近い。存在を否定され、その世界は幻想世界となった」
たしかにそうなるだろうよ。
ただ、こっちの世界ならちゃんと人が居ると分かる。
人が居るからこそ群れが生まれ、組織となり国が誕生する──国がどれだけデカかろうと、人が居なければ空っぽの箱だからな。
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