虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
幽源の理
冒険世界 始まりの街
「本当にあるな。伏字じゃないってことは、完全に運営側で認証したってことか……」
《称号にあった『レムリア解放者』が伏字であったときは、それをエラーとしておりましたが、彼ら側でも何かがあったのかもしれません。これが俗に言う、神のお導きというモノなのでしょうか?》
「現実でそれを言ったら、笑いものになるか宗教家なのかと疑われるだろうけど……そうだな、たしかにそうかもしれないな」
広場にある噴水、並びにセーブ石がある初期地点では、別世界に行くための転送地点としての役割も担っているのだ。
知られている移動地点はここだけなので、移動する際は必ずここに来る必要がある。
前に『SEBAS』に集めてもらった情報によると、他の世界では異なる地点に特殊な世界へ向かえる門があったらしい。
掲示板情報なのであまり確証は無いみたいだが、この世界でも探す余地はあるようだ。
「おっと、注意事項が書かれてる……幽源世界? たしか、『幽玄』は趣があるとかそういう意味だと覚えていたけど……」
《おそらく、意味合いが違うのでしょう。風情のある世界であると言いたいのであれば、そのまま表記すればよいはず。そして、レムリアは冥界に封印されていました》
「……ああ、視界に映っていると思うがそうみたいだな。幽体での活動を強制される、それが渡航条件みたいだ」
説明はそこまでしか書かれてはおらず、その理が何を意味するのかは分からない。
少なくとも分かったこと──それが俺にはかなり不利益なことだ。
「ドローンは無理だな。少なくとも、機械制御で飛ばすヤツは」
《協力を要請しますか?》
「それはそうだが、いきなり出すのはやっぱりダメだな。一度俺自身が向かって、安全であることを確認してからじゃないと……」
これまでドローンを多用していたのは、機械に魂が無いことが主な理由だった。
幽源世界ではドローンが使えない可能性があるため、それを改めなければならない。
「だが、それでも異なる手段を用いて調査をする必要がある。幽体が必要なら、持っていつ者に頼ればいいだけだ」
《では、すぐに向かいますか?》
「やっぱり準備が先だろうな。:DIY:ならもしかして……と考えれば、幽体に関する問題も解決できるかもしれない」
《畏まりました──工房を起動させます》
何もしないで向かうのは、愚策だろう。
幽霊とか霊体とか、そういう情報を掻き集めて作れるものを作っておきべきだ。
──向かうのは、それからだろう。
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