虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

運航許可



 アイプスル

「ツクル」

「どうしたんだい、レムリアちゃん?」

「少し、お話」

 魔物たちの下を訪れていたある日、レムリアが俺に話しかけてきた。
 普段は魔物たちと遊んでいる彼女だが、俺に話しかけることは滅多にない。

「うん、構わないよ。今回はどういうお話をするんだい?」

「■■■■のこと」

「レムリアちゃんのこと?」

「違う。私のことじゃなくて、■■■■のことだよ」

 念のため『SEBAS』に確認するが、彼女が言っているのは『レムリアのこと』だ。
 しかし、彼女のことではない『レムリア』なのか……あっ、もしかして──

「レムリアって世界のことかい?」

「うん、■■■■のこと」

「けど、どうして急にそのことを?」

「思いだしたから」

 このタイミングで思いだした理由が不明ではあるものの、知っておきたい情報だ。

 現実で知れる範囲でレムリアについて調べたことはあるが、キツネザル云々でそういう名前になったことしか分からなかった。

「■■■■に行きたい?」

「レムリアちゃんに何も悪いことが起きないなら行ってみたいね。でも、レムリアちゃんが痛い思いをするなら、行かなくてもいい」

「問題ない。あくまで私は鍵、■■■■への道を切り開く存在」

「鍵?」

 俺の呟きにコクリと頷く。
 時々『SEBAS』による住民の健康診断があり、そのたびに検査はしていたが……少なくともレムリアに、普人族に存在しない器官があるなどの異常は無かったはずだ。

「私が認めた人は、■■■■に行ける。けど行き方は分からない。だから、とりあえず認証だけでもしておく?」

「うん、ありがとうねレムリアちゃん」

「……それが私の使命、なんだと思う。全然覚えてないけど、きっとツクルが欲しい物があると思うから」

 ペタッと右手の甲に触れてくる。
 するとそこに紋様が浮かび上がり、突然目の前に画面UIが表示された。

  □   ◆   □   ◆   □

 ■■■■による認証を確認
 称号『■■■■解放者』は『レムリア解放者』へ変化します

 座標登録完了──レムリア世界への渡航が許可されました
 以降、惑星間移動の選択肢にレムリア世界が追加されます

  □   ◆   □   ◆   □

 知らなかった情報が入ってくる。
 やはりレムリアちゃんは『レムリア』であり、彼女そのものが『レムリア』へ繋がる鍵のような存在だった。

 なぜ封印されていたのか、それは『冥王』にしか分からないことなので不明ではあるものの、レムリア世界へ行ってみれば何か分かるかもしれない。

「ありがとう、レムリアちゃん」

「うん、もし行けたら気を付けて」

「ああ、絶対に戻ってくるさ。それまで友達と仲良くしているんだよ」

「分かった」

 先に選抜隊の派遣が必要だな。
 何が起こるか分からない……封印されるほどの場所なのかもしれないのだから。


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