虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

悪鬼の巣 その03



 この迷宮も三階層なんだとか。
 かつて踏破した『幼子の揺り籠』と同じ階層数ってのは、なんだか運命を感じる。

 ──だって、無駄に長いより楽だし。

「それで、下では何が起きている?」

大鬼帝オーガエンペラーが指揮を執り、一気に侵攻するための作戦を立てております》

「大鬼帝ねぇ……キングより強いのかよ」

《位では王よりも帝が、帝よりも神の方が潜在能力値は高いです。なお、この場合の神とは現人神の一種でございます》

 俺のふと疑問に思ったことを、言葉に出してもいないのに教えてくれる『SEBAS』は優秀以外のなんでもない。
 そうか、神様じゃないってことか……さすがに死神様の同族には手を出せないからな。

 まあ、今回は帝であって神じゃないから関係ない話だが……いずれショウやマイたちがそんな強敵と相対した時、すぐに応援を出すことができる。

「それで、俺たちの行動は?」

《いえ、それは大丈夫です。しかし、そろそろ集合に現れない個体を不審に思いだす頃かもしれません》

「あちゃー、かなりの数をってきちゃったからなー。さすがにそろそろか……なら、それを合図にして動くぞ」

《畏まりました。そのように手配を》

 細かい設定は『SEBAS』に任せる。
 ピッタリのタイミングを計るのは、面倒この上ないからな。

 だが、『SEBAS』であればできる……頼むしかないだろう。

「ただ、ドローンだけで倒すことは可能なのか? ソルロンならともかく、他の武装でイケる気がしないんだが」

《そうです。ドローンだけでは大鬼帝を討伐することは困難でしょう。ですので仕上げのみ、旦那様にお願いしたいです》

「そういうことなら、任せておけ……というか、困難なんだな」

 そう、不可能ではない。
 やろうと思えばできるが、何かしら面倒なことがあるからやらないだけだ。

 その気になれば、核弾頭だろうがブラックなホールだろうが作れるみたいだし……。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 悪鬼の巣 三層

 彼らは揉めに揉めていた。
 そりゃそうだ、『SEBAS』の戦略によりあちこちで問題が起きているからだ。

 暗殺、裏切り、反乱、破壊工作……挙句の果てにすべての予備武器を失っている。

「──とまあ、そんなわけだ。さっさと決着といこうか」

『キサマ、よくもオレの計画を!』

「あーあ、こんな奴のせいで俺のささやかな暇な時間が奪われたってのか。まったく、無駄でしかねぇな雑魚の駆除ってのは」

『なんだと!!』

 玉座に座ったまま、大鬼の帝王は怒り狂い俺に威圧をぶつけてきた。
 ……うん、この時点で死亡ゲームオーバーだよ。


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