虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
緊急納品 後篇
とりあえず個室を独占して、そこで生産作業を行うことにした。
一先ず部屋に監視システムが無いかどうか確認して、それから準備を始める。
「問題ないか?」
《ございません》
「ならいいか──:DIY:スタート!」
《:DIY:が起動されました
使用者『ツクル』の指定能力値──概念崩壊……成功しました
アイテムの作成成功後、または条件無視によって解除されます》
いつも通りの全能感、これがあれば何でもできると錯覚できる力が漲ってきた。
まあ生産にしか使えないので、それはただの錯覚でしかないのだけど。
「ポーションは出来ているんだな?」
《はい。注文の品は指定数分》
「なら、作るのは『再生の縫帯』だけか……よし、作り方が浮かんでくる」
材料が足りなかっただけで、やはりある程度レシピそのものは頭に入ってくる。
応用レシピのような物は一度作らないと出てこないのだが、どうやら『再生の縫帯』は魔物の素材は使うが基本的な物のようだ。
「『SEBAS』、素材を変えて作れるように解析はしてくれよ?」
《心得ております》
「どれだけ希少な素材だろうと、魔物の素材に比べれば用意が簡単なんだ。なんでもいいから、見つけだせればこっちのもんだ」
別の素材を使う、または異なる方法で生成できるアイテムは多い。
作り方が一つしか分からない、その問題もまた:DIY:の問題点である。
「──まあ、こんな感じか」
《『再生の縫帯』──解析を実行します》
「さて、とりあえずある分の量産はやっておこうか」
ここで複製してもいいんだが、どういう弊害が出るか分からないので、とりあえず今は普通に作っていく。
ただし、材料は一つずつ取っておいて、それだけは複製しておいた。
そうして生まれるのは包帯の山。
その一つひとつが肉体を繋ぎあわせる力を持った特殊なモノで、どれか一つを売るだけでもそれなりの額が手に入るだろう。
「複製……は、消費魔力が多いな。さすがに肉体を生やすなんて品は、パンと同レベルで複製できないか」
複製に必要な魔力は、その品の価値や内包する魔力などによって変化する。
なので価値の高い物は、大量に複製するにも時間がかかるのだが……今の俺は魔力も無尽蔵なので、簡単に可能だ。
「まあ、仮に直接複製できなくても、魔石生成はこの状態でもできるんだし、何度でも魔石を触媒に複製すればいいんだけどさ。このままできた方が楽だけど」
無事に指定された数の包帯を作り上げる。
先に用意していたポーションやら塗り薬やらを、無事提出するのだった。
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