虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
西の十区画目
W10
前に『SEBAS』が言っていた法則性が当たっていたのか、十区画目であるW10には街が存在していた。
エウストから一つ森を挟んでの場所だが、通行とかどうしているんだろうか?
《守護獣の住まう森は本来、開発禁止の盟約が取り決められております。そのため、あの道ではなくS1W9から道が繋がっていることが確認できました》
「あー、斜めから道が見えてきたな」
《あの地は城塞都市、さらに先に在る王国を守る場所とされております》
「なんかスケールがデカい感じになってきたな……北はアレだし、ドゥーハストもいろいろあったし。東は……うっ、頭が……」
うん、考えない方が良さそうだ。
とりあえず意識を切り替えて、状況を改めておさらいする。
「十区画目か……この先はどういう形態で国が成り立っているんだ?」
《王国君主制です。資料によると、豊かな土地と大量の迷宮によって資源も豊富に存在しているようです》
「迷宮か……そういえば、迷宮を踏破するとボーナスが貰えるんだよな」
《旦那様の職業を解放するというものでしたか。完全となった際はどれだけの性能を発揮するのか、私にも解析できません》
そりゃあ解放に神様が関わっているみたいだし、難しいだろう。
完全解放されるまでは詳細が暴けないように、システム的なロックがかかっているみたいだし……どうしようか。
「俺でも踏破できて、周りに悪影響が出ない迷宮って無いかな?」
《そうなるとやはり、未発見の迷宮を知られる前に踏破するのが最適かと。『騎士王』から紹介された『幼子の揺り籠』は、あくまで踏破できる条件が旦那様にしか与えられていなかったからこそできたものです》
「けど、そんな異常な迷宮はこれ以上見つからないか……あの頃とスキルレベルはまったく変わっていないから、同じ条件で入ることはできるんだけどな」
新規スキルがいっさい習得できておらず、すべて称号から得る外部的なものだから仕方ない……あれって特別なモノ以外、全部レベル固定らしいし。
「迷宮は都市の中にもあるのか?」
《氾濫の恐れがあるので、迷宮は都市の外部に存在します。また、自然発生した迷宮が内部に誕生したという話はございません》
「自然発生した? ということは、そうじゃないモノはあるのか?」
《はい。人工的に迷宮を造りだそうとしたとされる、禁忌に記された文献が》
ふーん、造っちゃダメなのか。
そうなると、俺ってもう禁忌に触れている犯罪者ってことになるんだが……知らないことだし、この星で起きたことでもないからギリギリセーフだよな。
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