虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

魔物のお土産



 さて、そうして情報提供者(小蜘蛛)を確保できたわけだが……それとは別に、やらなければならないことがある。

「お、多いですね……」

『滅多にないわよ、ほぼ全員が素材を提供してくれることなんて。たしかに真・世界樹が在る地の食物なら、そうなるはずよね』

「いえ、それは……まあそうですね」

 環境を機械でコントロールした環境で栽培しているのだが、まあそっちの方が信じてもらえるのなら何も言うまい。
 俺が気にすべきなのは、大量に渡された魔物由来の素材の処理なのだから。

 何度も言っているが、:DIY:はあらゆる素材──それこそ星の力が備わった物すら生成できるが、魔物の一部から生成されるアイテムだけは生みだすことができない。

 まあ、管轄の問題だろうと思っている。
 万物創造の力がナニカにアクセスして作用するモノだとして、魔物はそこからアクセスできない存在なのかもしれない。

 だから:DIY:も用意できないのだ。
 未だに正体不明な(■■■の注目)など、いろいろと気になる部分がある。
 すべてを暴くことになるのは、まだまだ先だろうな。


 閑話休題ほぼバレバレ?


 糸系の素材が多いが、体毛や生え変わった爪や牙などをくれるモノもいた。
 珍しい物で言えば、蜜や毒などもある。

「さて、では私はこれで……」

『ええ、たまには遊びに来なさい。ここの民たちもそう言っているわ』

「ははっ。ええ、そうしましょう」

 たとえ相手が俺ではなく、俺の持ってくるお土産に期待しているとしても、気にしてはならない。
 親戚のオジさんとは、時にそうした役割を果たす必要があるのだから。

 彼らの見送りを受け、ゆっくりと森を抜けていく……時折他の休人プレイヤーを見るのだが、まるで何かを探しているように映る。

「なあ『SEBAS』、あれって……」

《はい。おそらくはこの森の魔物を探している集団かと》

「俺が大人気だったから、森から魔物がいなくなっていたと……悪いことをしたな」

《彼らが旦那様以上に極上の品を出せなかった、ただそれだけです。彼らと魔物の間に契約は結ばれておりません、ならば誰が食料を与えようと運次第ということです》

 なかなかに厳しいことを言うな。
 俺からはまったく分からないが、彼らが零す愚痴の中に嫌味な単語でも入っていたのかもしれない。

「なら、あれは放置ってことでいいのか?」

《構わないかと。旦那様が会われたいというのであれば、こちらからタイミングをお伝えしますが……》

「いや、さすがにそこまでして会いたいわけでもないし。どんどん次のフィールドに向かうとしよう」

《畏まりました》

 そうして森を抜けると、彼らのことを忘れて次の冒険へ向かうのだった。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品