虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

レベル限界 前篇



 人族のレベル限界は決まっている。
 途中でカウンターストップが発生し、いくつか存在する条件を満たすことでそれを解除で居るが……人が人として達することができる数値にそもそも限界があるのだ。

 その数値が──250。

 魔物であればあっさりと超えることができるその数字も、人族にとっては決して超えることのできない大きな壁。
 過去の人々は、気づいてしまったその壁にどうしようとしたのだろうか?

 聞いたところによると、そうしてレベルの概念に囚われた結果──魔物となった人族の話があるらしい。
 先ほど『SEBAS』と話した急速なレベリングの弊害、それが魔物化なのだ。


 さて、そんな話から少し変わるが……人のまま限界を超えた者も存在する。
 矛盾しすぎだろとクレームが来そうだが、それはそれでちゃんとした理由が存在するのだから仕方が無い。

 この世界には神が存在し、人よりも高位の存在なんて至る所に居る。
 そんな中で人族が生存できるかと言えば微妙なことは事実であり、彼らの史実が刻んできた真実なのだ。

 神々がそんな人族に与えたシステム。
 その一つが──『称号』である。

 すでに『超越者』の存在で分かっているとは思うが、このゲームでは彼らもまた称号を持っている。
 自分でセットを変更することはできないため、あくまで一つだけみたいだが……それでも『超越者』などがあるので関係ない。

 神の力が宿る称号システム。
 これによって承認された者たちは、人族の限界であるレベル250を超えることが許されるのだ。

 条件はまだ判明しておらず、『超越者』となることが確実とされている。
 ……目指してなれないからこそ、伝説や神話級の存在なんだけどな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 始まりの街

「久しいな、『生者』よ!」

 なんだかタイムリープしているんじゃ? と思うほどに変わらず同じ挨拶をしてくる。

 そんな『騎士王』と同じ席に着くと、いつものように焼き串を注文し、食べながら話を始めた。

「なあ、『騎士王』。レベルはいくつ?」

「350だが……急にどうした?」

「人族の限界を100も超えるなよ。いや、ちょっとレベルについて考えていてな」

「むっ。ならばそういう『生者』はどれくらいなのだ?」

 万能の『騎士王』が本気で鑑定を使えば、それこそ『SEBAS』がどれだけ足掻こうと看破できるだろうに……こういうところでフェアな考えができるからこそ、『騎士王』で在り続けるのだろう。

「──765」

「……気のせいだろうか。『生者』が765などという、莫大なレベルを告げたような幻聴が……」

「事実だよ。一時的に偽装を解除するから、普通に鑑定で視てみろ」

「…………本当、だな」

 人族三人プラスちょっと、それが今の俺のレベルであった。


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