虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
超特殊レベリング
アイプスル
腕輪を装備したからといって、急速にレベルが上昇するわけもなかった。
そもそも死線ボーナスで稼いでいても、そう簡単に上がらないレベルまで達しているのだから、今さら補正が入ろうと変わらない。
「『SEBAS』、もっとも簡単にレベルを上げる方法ってなんだと思う?」
《レベルだけの上昇を望むのであれば、すぐに行える方法がございます──星脈の力をお使いになることです》
「星脈の?」
この星『アイプスル』を管理するために必要なエネルギー、それは星脈と呼ばれる特殊な地脈に存在する。
星の核から星脈へ、そしてすべての地脈を辿ることで──星は自然を保っているのだ。
《星脈の力は膨大なものです。それは人の身にあまるものですが、同時に得た者に莫大な力をもたらします》
「デメリットは?」
《適合できなかった場合、人外となります。その星の在り方によってどうなるかは法則性に差がございますが》
「人外か……『超越者』って、ある意味もうそんな存在だよな?」
普通の人族は万能の才能を持たないし、ましてや無限に蘇る能力など有していない。
そんな者たちを普通とカテゴライズすることはできない、そして人から外れた存在のことを地球では『人外』と呼ぶ。
《旦那様の場合、星の主として登録されておりますので例外となります。たとえ適合できずとも星核が旦那様に合うようにエネルギーの調整を行います。そのため、確実に旦那様に合う経験値へ変換できます》
「凄い便利な機能だな、それ。分配をこの世界の魔物たちにすることは可能なのか?」
《旦那様がそのように設定をなされば、そうすることも可能です。魔物たちが暮らすエリアに集中的に星脈の力を注ぐことで、レベルは急速的に向上するでしょう》
「……何か裏があるな、それ」
さすがに急速なレベリングの弊害が何もないということはないだろう。
俺の場合はさっきの話的に問題なさそうだが、魔物たちの場合は……一気に注がれることで問題が起きる。
《はい。こちらの方法を選んだ場合、魔物らしさを高めた存在となる確率が向上します》
「魔物らしさ?」
《残忍さ、狡猾さ、暴力性……本能に刻まれた力の在り方を追求することになります》
「つまり、共生できなくなるのか」
さすがに住民全員がそんな悪逆非道な星など、やっていけないだろう。
あくまで共にあろうとすることを心がけるからこそ、俺たちは共に生きている。
《もちろん、ゆっくりと行うのであれば問題ありません》
「そうなのか?」
《肉体に馴染む速度でゆっくりと注ぐのであれば、もともと人外である魔物たちに悪影響は起きません。あくまで耐えられない肉体がもっとも最適な方法で取り込もうとした結果が狂化なのです》
ただ、レベル1の魔物たちにそれをやるとかなりキツいようで……すでに少しずつやっていてくれたみたいなので、これからはより加速してくれるらしい。
うん、つまり俺以上に能力値が高い魔物たちが増産されてしまうわけだ。
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