虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

歓迎ミニゲーム その16



 それから数日が経過した。
 手に入れた二つの腕輪を解析してみたが、やはり運営製のアイテムなためロクな情報が集まらない。

 システム的にレベルへ補正を掛けているのは分かったが、その法則が掴めていないから下手に手を出せない……といったところだ。

 二つの腕輪はなんだか相反するシステムを採用しているようで、同時装備はできない。

「──ということで、そのシステムだけを破壊することに成功しました」

《さすがです、旦那様》

「いやいや、『SEBAS』がいなかったら何もできないからな俺。どれだけ力があっても戦術が無ければ勝てないのと同じだろ」

 アクセサリーの装備数は、顔や指などで個数が制限されている。
 しかしそれ以上の数を装備しても構わないのだ……ペナルティを無視すれば。

 能力値に制限が掛かるうえ、違反した部位のアクセサリーが持つ装備補正が減少するのだが、器用さにしか問題が生じない俺としては、どれだけ装備しても困らないわけだ。

 腕輪が装備できるのは二つ、しかしイベントで手に入る腕輪は容量を二つ分食うように設定されていた。

 それを『SEBAS』は無視するアイテムの作成を提案し、実際に作ってみたわけだ。

「装備時に生じるデメリットの無視か……外すたびに必要になるんだよな?」

《はい。一度装備してしまえば常時展開可能ですが、付け替えるとなればシステムによる再チェックが行われますので》

「あー、そりゃあ無課金勢には厳しいな」

 そう、実は同じような課金アイテムが存在している。
 だから俺はそれを提案し、『SEBAS』に設計できるかどうかを尋ねたのだ?

 運営のシステム法則に遵ったアイテムそのものは作れずとも、:DIY:の力があればそれと同等の品を創ることはできる。

 まさにモノづくりの力、有から有ではなく無から有すらも生みだせる創造力だ。

「そういえば『SEBAS』……じゃなくてセバヌスとカエンとしての収穫はどうだ?」

《ある程度レアアイテムの回収には成功しました。ですが、数量限定の品は奥さまやお嬢様やご子息様が手に入れておられましたので一部失敗しました》

「うん、それは仕方のないことだ。ある意味当然だから気にしなくていい」

《代わりと言っては申し訳ございませんが、それ以外の品はほぼすべて、ストック分も含めて集めております》

 新人向けの一定レベル以下の補正装備や、熟練者向けのデメリット有りの強い装備なども並べられていたらしい。
 いらない能力値を捨てて、欲しい部分を強化する……うん、ゲームっぽいな。

 ──そしてそれを改造し、ノーデメリットで売り捌く……夢が広がリング!

 そんなこんなで、俺がほとんど何もしないままミニゲームイベントは終わるのだった。


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