虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
歓迎ミニゲーム その12
模擬戦闘が始まる。
相手は銃を構えた少年、鑑定系のスキルで俺の虚弱すぎるスペックを把握したのか……とても歪んだ笑みを浮かべていた。
「おい、おっさん」
「……なんでしょうか」
「おっさんも新人だよな? ステ振りぐらいちゃんとした方がいいんじゃねぇの? それとも、そのやり方すら知らねぇのか?」
「いえいえ、私は始まった頃からずっとプレイしていますよ。そのうえで、いま君が見ているであろうステータスなのです」
そう言うと、当然ながら少年はプッと息を漏らした直後──ゲラゲラと笑い始める。
本当にどうでもいいんだが、少年のツボに入ったようでお腹を抱えてヒーヒー言っている……そんなに面白いか?
そんな俺の心が分かったのかそうじゃないのか、呼吸をして落ち着きを取り戻そ……うとするのを失敗しながら、嘲笑と共に俺へ話しかけてくる。
「あっ、分かった。おっさんってもしかしてこの銃を最初に使ってた人だろ。掲示板で噂になってたぜ、カッスカスのプレイヤーが銃無双してるって……同じのをみんなが使えばアドバンテージも無くなるのにさぁ!」
「…………」
「感謝してるよおっさん。おっさんのお蔭でこうして銃が使えるんだからさ。お礼にこの銃で、おっさん相手に無双してあげるよ!」
「そうですか、よろしくお願いしますね」
この歳の若者に、いちいち怒ってもいられないからな。
見た感じ中学生でガキ大将タイプ、自分が強いと思える最後の時期だな……。
うん、あの頃の俺はMMOを始めた頃で、いろんなプレイスタイルを模索していたな。
最終的にランダムに落ち着いたのは、それから少ししてのことだったっけ?
──なんて、思い出に耽っていたのが少年の癪に障ったみたいで、俺の足元に一発の光線が放たれた。
「まだ始まっていませんよ?」
「調子に乗ってんなよ! おっさんの優位性なんて何一つねぇんだからな! 思い知らせてやるよ、自分がどんだけ弱ぇかを!」
「そうですか、よろしくお願いしますね」
「~~~! ぶっ殺す!!」
ずいぶんと煽り耐性が低いな。
改めて、俺も少年に見せるように銃を用意して構えておく。
≪それではカウントダウン──5・4・3・2・1……試合開始!≫
開始早々、少年はトリガーを引く。
なるほど、一発目で俺にそれが命中すればたしかに勝利できるだろうな。
「ヒラリっと」
「ハッ?」
「おや、避けてはいけないなどというルールはありませんよ」
「くそっ、くそっ、くそぉおぉ! なんで、なんで当たんねぇんだよ!」
俺が避けることが、そこまで屈辱に感じられるとは思ってもいなかった。
あれだろうか、俺は射的用の的ぐらいにしか捉えられていなかったのかもしれない。
──俺としては、ただ勝てばよかったんだが……俺の銃を使っていると言うのなら、もう少しヒントを教えてあげようじゃないか。
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