虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
歓迎ミニゲーム その08
もちろん、『輪投げ』もこれまでにクリアしてきたミニゲーム同様、ただ輪っかを目的の地点に配置するだけでクリアなんて難易度ではなく……『言うは易し行うは難し』な内容である。
だがそれでも、『早熟の腕輪』を手に入れるためにクリアする必要があった。
故に『SEBAS』のサポートを受けて、再び挑戦しているのだ。
「輪投げをやりたいのですが……」
「畏まりました。では、こちらを──」
そうして手渡されるのは、九つの輪。
それで何をやるのか、というのはいちいち聞かずとも分かるだろう。
「ご説明は必要ですか?」
「いえ、すでに一度行っていますので」
「分かりました。では、頑張ってクリアしてください」
受付の女性からこれまでも、そしてこれからも言うであろう応援を受けて、俺は輪を投げる会場へ向かう。
「意外と難しいんだよな、全部やるのって」
そこでは今までの会場同様に、筋肉質なオヤジや若い少女など老若男女問わない人種が等しく同じミニゲームを行っている。
老人であろうとできる者はあっさりクリアしているので、大切なのは『腕』なのだ。
「まあ、どれだけ器用さが足りても、筋力が足りなきゃ飛ばないんだけどな」
たしか攻撃力の隠しパロメーターとして存在するらしいが、結局それが1しか無いのだからほぼ0に等しい。
普通の距離であれば届いたかもしれないのだが……ここの『輪投げ』はイジメだ。
《距離把握──前方四メートル。公式ルールより二倍遠いですね》
「そうそう、だから色を分けているんだよ。まったく、大変なゲームだ」
実は輪投げにはちゃんとルールがある。
台や棒の長さは決まっているし、得点なども存在しているのだ。
「合格点は90点。一列15点だから、最低6列は揃えなければならない……無理だろ」
ちなみにそれを目指すには、失敗が一度しか許されない。
しかもその失敗する場所も、斜めが揃うために必要な部分以外──つまり中心を除く十字の所でなければ失敗となってしまう。
「けど、それもちゃんと補正を受けていればクリアできるんだもんな。本当、能力値の補正って素晴らしい」
俺と似た極振りのヤツでも、それなりに工夫すればクリアは可能だ。
実際このミニゲームを、ATK極振りだと叫ぶ奴がクリアしているのを見たし。
「何より、普通の奴は生命力か魔力か精神力のどれかを削れば強化できるからな……羨ましい限りだよ」
《ですが、私がおります。旦那様のクリアへの道を私が築いてみせましょう》
本当、頼もしい執事なこって……目から液体が零れてくるや。
そんなこんなで、完全インチキな再挑戦がスタートする。
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