虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

歓迎ミニゲーム その04



 俺の番が回ってきた。
 目の前にはダーツ用の的……というより、なんだかどこかのパークを彷彿とさせる回転式の的が並んでいる。

 ダーツを選んだ者たちはそこに描かれた二枚の絵──◯と×の内、◯が描かれる小さな部分に先端ポイントを刺さなければならない。

 クルクルと回転しているため、ただ投げるだけではクリアできないのだ。

『パージェー□、パージェー□……』

 こちらもまた、パク……寄せて来ているなと思える例のワードが何度も挑戦者の耳に入り、集中を逸らそうとしてくる。

 早くなったり遅くなったり、あえて唐突に別の単語を言ったりと……結構えげつない。

「まあ、問題ないけど」

 結界の魔道具によって、まず音が完全に遮られた。

 そのうえで視界にホログラムが浮かび、どのタイミングでダートを投げればいいのかが正確に表示される。

「よいしょっと」

 肉体限界を超えて、結界が俺を強引に動かす──そして放たれたダートは、寸分の狂いもなく◯の中心に突き刺さる。

≪パンパカパーン!≫

 その瞬間、頭の中でファンファーレが鳴り響くと、天から一枚のコインが降ってきた。

 コインには放物線を描くボールが刻まれており、このミニゲームをクリアした証として手元に残る。

「よしっ、クリア」

 残った四本のダーツを適当に投げて、そのすべてを重ねるように刺していく。

 辺りで感嘆の声があがるが……なんだかすみません、インチキしているんでそういうのはしなくてもいいですよ。



 それから建物を出て、街の中を彷徨う。
 ミニゲームの会場はそれぞれ離れているので、必ず歩く必要があるのだ。

「順調だな……これなら次の日までには終われそうだ」

《はい。本日中にすべてを回るには、少々時間が足りませんね》

「祭りは一週間続くんだ、ゆっくりとやればいいさ。……いやまあ、明日中に終わらせたいけどな」

 俺がこっちの世界に居る間も、やりたいことが少しずつ溜まっている。
 そういったものを解消する時間は、可能な限り多い方がいい。

 それに、腕輪を手に入れればこの世界に滞在する理由は無くなる……イベント限定のエリアを観光した後は、人の減った通常フィールドでアイテムの採取でも行うべきだろう。

「次はどれにしようか……『かくれんぼ』、これにしようか?」

《では、それに合わせた準備を整えます》

「ああ、よろしく頼む」

 生命力は1しかない虫以下の俺だが、厳しすぎる捜索網にあっさりと見つかってしまったのだから仕方がない。

 今回こそはサポートを受けて、何としてもクリアしてみせる。


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