虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
歓迎ミニゲーム その03
無事、『だるまさんが転んだ』をクリアした俺は、続いて『射的』と看板を掲げている建物の中へ入った。
そこでは銃・弓・ナイフ・石など……思いつく限りの投擲用のアイテムが並んでいる。
「当てること自体を『射』と読むから、こういう風に並んでいるわけだが……やっぱり、違和感があるな」
《祭りではさまざまな物を投げておりますので、そういった形式となるのは致し方ないかと……使う品によって攻略法が異なります、旦那様はどれをお選びになりますか?》
「どれを選んでもいいのか?」
《はい。旦那様であれば、どれを選んでもクリアすることができるでしょう。私はただ、旦那様がもっとも楽しめるようにささやかなアドバイスを行うだけですよ》
少し、涙が出そうになった脆い涙腺を揉んで解し、その言葉に改めて感動する。
いずれはショウやマイも、こうやって親の後ろではなく前に進み出ようとするのか……なんだか感慨深いものがあるなぁ。
「じゃ、じゃあ──ダーツで」
ちなみに、先ほどやったときはほとんど選ぶ物が無かった。
弓は持てるが引っ張る力が足りず、銃は撃つと反動に耐えられないなど……現実での力が反映されていなかったらどうなってたか。
「すみません、ダーツをやらせてください」
「──はい。ルールはお分かりですか?」
「ええ、二回目ですので」
「そうでしたか……では、クリアを目指して頑張ってくださいね」
そう言って、受付で渡されるのは──五本の柔らかい手投げ矢。
要求すれば変更してもらえるが、俺はそのまま受け取ってダーツ用の会場へ向かう。
投擲スキルを持つ者、またそうでなくともダーツに自信がある者たちがダーツの会場には集まっている。
そのためすぐに出番が来るわけではなく、準備する時間があるわけだ。
「『SEBAS』、こんな材質なんだが……可能なのか?」
《仕様はほぼ変わっておりません。また、素材の一部は現実の物をそのまま使っておるようです。微調整が、改めてご報告します》
「スキャンしたデータとかか? まあ、コラボ商品とかを出すならそうなるよな」
味覚に美味しい食べ物の情報を伝えるために、運営もさまざまな物をデータとして用意しているのだろう。
そんな素晴らしい技術があれば、当然物体のデータ化も容易なわけで……。
「そうか……それなら世界の三大珍味もまた食べられるのかな? 俺、実は一度食べたことがあるんだよ。けど、今度は家族で団欒をしながら食べてみたいんだよ」
《畏まりました。研究所にて、それらの味の開発を行いましょう……と言いたいところですが、その味を持つ素材をドロップする魔物の生息地を探すことにしましょう》
「ああ、ぜひそうしてくれ」
さすがにDNA云々の品種改良で用意されるのは、まだ違和感がな……俺独りならそれでも構わないが、家族に問題があるのはさすがに困るわけで。
──もちろん、信じてはいるんだがな。
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