虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
二つの腕輪
そして数日後、イベントの内容が全休人たちに公表された。
「……はあ、ミニゲームね」
今回はランキング系のものではなく、先輩である一期生と新人である二期生の仲を取り合うようなイベントになっている。
そのため報酬も、ある程度何が貰えるかが発表されていた。
《『早熟の腕輪』と『晩熟の腕輪』、やはりこれらが目玉のアイテムだと思われます》
「やっぱりか……普通はこれが欲しいよな」
その名が示す通り、経験値ブーストができる二つのアクセサリーだ。
早熟を嵌めればレベルの低いモノの経験値が溜まりやすくなり、晩熟を嵌めればその逆となる。
同時に装備することはできないが、新人にもすでにプレイしてる者たちにも役に立つアイテムだ……もちろん、問題はあるがな。
「早熟を装備中はレベルが高いモノは成長が遅くなり、晩熟はその逆と……だけど、新人にはアレがある」
《『天の恵水』──低レベルの間のみ、あらゆる経験値に補正が掛かるアイテムですね。アイ嬢とミー嬢より見せていただいた際に、解析は済ませてあります。アレは完全に──運営製の品でございます》
「再現は不可ってことか……」
《申し訳ありません》
ゲーム内で時間が流れているように、このEHOでは世界が時を経る中で自然に生まれたアイテムと、運営側が用意した経歴を持たないアイテムが存在する。
そのうち自然に生まれたアイテムならば、『SEBAS』が解析することで:DIY:である程度再現できるのだが……運営が用意したアイテムの場合は、それができない。
──正確には、やらない方がいいのだ。
「俺も垢バンは嫌だしな。それに、上げようとしても意味ないし」
ゲームにおいて、経験値ボーナスというものが存在する。
レベル差やアイテムの使用など、方法はさまざまだが……俺はその一つ、死闘ボーナスとやらの恩恵に常時あやかっている。
条件は簡単──スキルや装備などの補正を含んだ能力値、そこに差がある状態で闘って勝利すれば良い。
レベルが能力のすべてを証明するわけではない、種族などによる差があるからだ。
その点で言えば、俺は最弱なわけで……。
たとえレベルだけは一丁前に上がっていたとしても、魔力と器用さ以外が絶望的な俺には多大なボーナスが与えられるのだ。
「まあ、何はともあれイベントだ。ミニゲームであろうと頑張るぞ」
《全力でサポートいたします》
「ついでに『SEBAS』もセバヌスとして参加してくれ……というか、カエンも参加させた方がいいかな?」
《それはカエンも喜ぶでしょう……分かりました、伝えておきましょう》
本当はカルルも呼びたいが……魔族だということで差別されたりすることは、さすがに避けたいからな。
そこをどうにかするのは、星の主にして万物を創れる:DIY:の使い手の役目だ。
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