虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

活発な妖精



 それからもう少し、『白氷』に関する情報の収集を行ってみた。
 エルフの隠れ里以外の妖精種の里を巡ったり、それこそ『騎士王』以外の『超越者』の所を訪問したりと。

 なぜ『騎士王』はスルーしたかと言えば、話がややこしくなりそうだったからだ。
 彼女は万能であるが故、それこそ望めばあらゆることができるだろう。

 たとえ『白氷』を封じた相手が神だと確定しても、本気状態になれば封印を『融かす』ために痛めつけることだって……『騎士王』という存在は、この世界があらゆる干渉を拒むために生みだした存在なのかもしれない。

「なんて考察は置いておくとしても、普通に関わらせたくないからな」

 王である『騎士王』が動くということは、一時的にとはいえ政治がストップしてしまうことと同意だ。

 頑張っている『円卓の騎士』が居た堪れなくなる……故にスルーしている。


 閑話休題ないせいファイト


「まあ、里長が言った通りだったな……」

 誰に訊いても、『白氷』はさまざまなことに興味を持つ妖精だったらしい。
 特に悪人ということもなく、妖精のイメージぴったりの……悪戯好きだったんだとか。

「けどまあ、全部が全部悪い悪戯じゃないみたいだな……ユリルのエリクサー作りにも協力してたようだし」

 永遠に融けない氷とか、そういったアイテムを提供していたらしい……俺としてはそれに興味があるので、目覚めたらぜひ見せてもらうことにしよう。

「妖精族って言っても、隠れ里出身じゃないみたいだし……細かい部分は分からなかったな。あとは新しく知れた妖精云々の情報、これも生かしておかないと」

 人工的に精霊を生みだす技術、というものがあるのだが……今回の話で新たに妖精が作れる気がした。

 ただ、少々マッドな研究になるかもしれないため、『SEBAS』が解析中だ。

「そういえば『SEBAS』、巡ってみて今さら思ったが……みんな知ってたな」

《それだけ『白氷』が各地で活動的に行動していたのでしょう。旦那様と同じく、興味を持ったものには率先して関わるようにされている方のようですので》

「……俺、そんなに活発か?」

《執事としては、とても好ましい方だと常日頃思っておりますよ》

 それってもしかして、一々問題を起こしてくれるから仕事が多くて楽しい、と遠回しに言われているのかしら。
 少々気になる言い方ではあるが、そういう言い方ができること自体に感動する。

 成長したな、『SEBAS』も。
 それは俺もいつも感じていることだが、子供が起こす行動のすべてになんだかブワッと心を揺れ動かされてしまうのは、親としてとても喜ばしいことだ。

 たとえ電脳の存在であろうと、それがAIであろうと──『SEBAS』は俺の子であり、頼れる執事である。
 ……あれ、何が言いたかったんだっけ?


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