虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
再質問
「それで、またイベントかよ」
「なんだなんだ、『新時代の申し子』がずいぶんと暗いムードだな?」
「……そんな変な二つ名が、お前の口から飛び出てきたからだよ」
今日も今日とて家族のために仕事へ行き、そこで拓真と情報共有。
そして発せられた謎の単語──物凄く、俺の中でテンションが下がった。
「だいたい、なんでそんな二つ名になるんだよ。もっとこう、地味なのは無いのか?」
「あるわけないだろ。お前、自分が何をしたのか分かってんのか?」
「銃の情報開示、それだけだろ?」
「……んなわけねぇだろ。さらっと未来技術の開示をしやがって、その理論まで生産ギルドに公開すりゃあどうなるかなんて、お前なら分かっていただろ」
光線銃の技術は、未だにブラックボックス状態となっている。
無理に解体すれば消滅するし、解析を内部の深くまで行おうとしても同じことだ。
「アレを使うと、光の剣も作れる。だから二つとも揃えたい奴は必ず二つ以上買うよな」
「今の技術力じゃ、まだ大剣ぐらいの大きさが無いと無理みたいだけどな。それで、何が問題だったんだ?」
「そのすべてだよ。普通嫉妬するだろ、そういう突出したプレイヤーにさ」
「瑠璃、されてたっけ?」
「…………あれは例外だ、いろんな意味で」
俺たちオンゲーのユーザーにとって、ルリという言葉自体が一つの概念であり理だ。
起こす行動すべてに疑念を抱かず、あるがままに受け入れろという意味の。
「えっと、理由だっけ? ……というか、この話もうしたよな?」
「あれから時間も経って、状況がいろいろと変わってんだよ。自分で光線技術を生みだせるようになったと一喜していたヤツが、全員揃って一憂していればそうもなるだろう」
なんでも、先に言ったシステムを突破できる奴が一人もいなかったんだとか。
あの『機械皇』であれば、すぐに解除できるレベルだったんだが……『SEBAS』式のシステムを、まだ破れはしないわけだ。
「それで、もっと詳しい話が訊きたいと……何を言えと?」
「さすがにブラックボックスを開示しろなんて言わねぇよ。せめて、その技術が普通のプレイヤーでも手に入るのかどうかだけ」
「──俺は『機械皇』という人物に接触し、技術を向上させた。俺が言えるのは、それぐらいだな」
嘘は言っていない。
そして、真実を言ったとしてもそちらの方が嘘っぽいことを自覚している……拓真がそれを本当に信じそうなことも。
「……前に言ってた、『超越者』か?」
「そうそう。ソイツは名前が示す通り、機械に詳しいヤツだったんだ。だからそこで地球の技術を提供する代わりに、アッチ側の技術の一部を貰ったってわけ」
「……恨まれそうだな、お前」
「さてな、それはお前ら次第だろ」
俺はあくまで、自分のため──そして家族のためにやっているだけだ。
問題は無い……そう、無いのだ。
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