虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

結界歩行



 あれから何度か爆破をすると、ようやく目的の場所らしき地点に辿り着く。
 ただし、それは人工物であって人工物ではない場所──

「氷でできた城は映画でやっていたが、まさか雪でできた城が本当にあるなんて……自己顕示欲が高いのか?」

《旦那様、例のシステムを作動します》

「ああ、やってくれ」

 地下から潜入したその建物は、真っ白な雪でできた城だ。
 雪は振動を吸収するため、本来ならそれは分からないのだが……『SEBAS』が生みだした重力波による探知は、それをあっさりと割りだしていた。

 さて、雪は振動を吸収するが、今回の場合は吸収した振動が『超越者』に届いてしまう可能性が非常に高い。

 なのでそれをなんらかの方法で防ぐ必要があるわけで──それを用意してもらった。

「よっと……結構難しいんだな」

《高速での移動はまだできませんので、非常時はその場から動かないでください》

「了解っと」

 俺の今の状況を分かりやすく説明すると、サーフボードのように結界に乗っている。
 いつも展開している肉体保護のバリアを、地面から少し離して展開することで接着しないようにしているのだ。

 相手が『超越者』ならば、そういう部分を偽装する必要がないわけで……魔力燃費的な部分を『SEBAS』にカスタマイズし直してもらった結果、俺の足を置く場所に一瞬結界を置くようなシステムに変えてもらった。

 常時展開ではなく『SEBAS』によって随時構築をしてもらえば、あまり魔力を消費しないで使うことができるからな。

「しかしこれ、魔力消費が無く造られているなんて信じられないな……異能とか、種族的な性質なのかな?」

《高位の精霊は、己の属性と同じ環境であればその場を支配できるとされております。おそらくこの『超越者』も、同様の能力を宿しているのでしょう》

「属性特化、とかならできそうだな。でもそういうのって、肉体そのものを属性だけでできた体に変換できるんだよな……」

《精霊は実際に、そういったことが可能な存在です。また、伝承によれば精霊王と呼ばれる精霊の場合、その場から属性に関するものが無くならない限り不滅なんだとか》

 不滅って……そりゃあなんとも羨ましい。
 俺は滅されてから、蘇っているだけで不死身でもなんでもないからな。

 モルメスは魂を直接攻撃できる武器だが、それでも不滅相手だと苦しいかもしれない。

「まあ、戦わないようにやりくりするのが、『生者』としての役割だろうな」

《旦那様は、充分にお強いですよ》

「ははっ、俺が強いように見えるなら、それはきっと家族のお蔭だな」

 守るべきものがいるからこそ、少なくとも俺は強くいようと思える。
 孤独の方が強いというヤツもいるが、今の俺には理解できない。

 ──家族の愛よりも好いものを、知ろうとは思えないからだ。


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