虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

坑道爆破



 雪が無い場所を通ればいいなら、雪が無い場所を作ればいいじゃない。
 そんなどこかの王妃様みたいな考えの下、ちゃっちゃと通路作成に励みだす。

「そーれ。いっちに、いっちに……」

 早い話、太陽が出始めた頃の吸血鬼のようにさっさと日の無い場所に逃げ込む……つまり坑道へ引き返ったわけだ。
 ここならば雪は確実に無いし、今さらバレてもすぐに撤退可能だし。

 人形たちを追加で用意し、トンネル作成用に使用している。

 魔法などの反応がバレやすいものを使わずに、物理的に掘っているのがいいのだろう、数十メートル掘っているがバレていない。

「なに、硬い岩盤に当たった? ……仕方ないな、例の物を」

 ピッケルを高品質な物に替えればイケる気もしたが、ここは今の気分に合わせて別の方法を試した方が面白そうだ。

 そんなこんなで人形に指示をして、とあるアイテムを用意してもらう。

「みんな、いったん離れてー。はい、それではカウントダウン──3・2・1……それ、ポチッとな!」

 手元に置かれたボタンを押すと、先ほどまで人形たちが居た場所で爆発が起きる。
 衝撃で坑道が揺れるが、『SEBAS』による計算された爆発はまったくと言っていいほどに上層へ影響を及ぼしていないらしい。

 無事、硬い岩盤を突破する。
 その先に続く層を、再び人形たちがピッケルを振るい掘り進んでいく。

 尽きることのない労働力によって、その道は少しずつ、そして着実に奥へ向かう。

「中央まであと少し、『超越者』の反応は結局奥だったし……何がしたいんだろうな?」

《侵雪によって失われた国は『N13』です。しかし『N14』には、また異なるものが眠っていると思われます》

「それが関係あるのか? いや、そもそもそこに何があるんだよ」

《何分、すでに失われている情報源でして。いつものお方が漏らしたものです》

 ああ、とある女性スタッフいつものね。

 今では完全に監視されているのか、いっさいの漏れが無くなっているらしいが……ここまで『SEBAS』が重用するって、どんんだけ重要なんだろう。

《それぞれの方位の奥地には特殊イベントが眠る、そう伝えておりました。少なくともここ『N14』は、この大陸においてもっとも北とも呼べます──可能性は、充分に》

「……というか、この世界の奥地ってどこにあるんだろうな。いや、どこだろうととりあえずは裏側か」

 さすがに初期地点が奥地だ……なんて虚しいオチはないだろう。

 なまじ『冥王』の居場所が初期地点に近いだけあって、なんだかその予想も当たりそうで怖いけどな。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く