虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
魔法の鞘 前篇
「【刀王】と『陰陽師』、そして正体不明の『超越者』たちか……なるほど、だいたいの検討はつく」
「マジか?」
「──『隠者』、『辻斬』、『外忍』だ」
「……ああ、資料に載ってたな」
隠蔽特化、暗殺系刀能力強化、暗殺系忍術強化……大まかに能力を求めれば、そういうことになる。
しかし、打てば響くってこういう時に使う言葉だっけ? そう思うほど、あっさりと正体が分かってしまった。
「しかし珍しいな、『隠者』が長期間同じ場所に滞在しているのは」
「? ああ、そういえば俺が一回目に行った時にも同じ反応があったわけだし……あれからずっと居るのか?」
「かもしれないな。『隠者』は恥ずかしがりやなところがあるからな、趣味の一人旅も兼ねてさまざまな場所を巡っている……はずなのだが」
「『陰陽師』にバレて、身動きが取れないとかそういう可能性は?」
あらゆる場所に式神を巡らせているようなヤツだ、いちおうの可能性はある。
しかし、『騎士王』はそれをハッキリと横に首を振ることで応えた。
「『隠者』の権能は運命からも逃れる、それ故に『隠者』は不老不死でもある」
「なるほど、その気になれば深海だろうが天空だろうが生きていられると」
「あくまで死の運命から逃れているだけだ。さすがにそこまでのことをすれば、再生するまでにかなりの時間を要するらしい」
「……試したことあるんだな」
若い頃というのは、なんだか万能感を覚えてしまうことがあるものだ。
きっと『隠者』も、その権能があればイケる! とか思ってしまったんだろうな。
「ちなみに『騎士王』は不死になれるか?」
「さすがに無理だな。初代『騎士王』様がある場所に封印した魔法の鞘、それを見つけだせれば話は別だろうが」
「……ああ、在るんだな」
魔法の鞘、持つ者に災いを退ける力を与えたり傷を癒すしそもそも受けないようにするようなチートアイテム。
この世界の初代様は、自分でしっかりと封印したようだ──地球の伝承だと盗まれて捨てられたって行方不明状態だからな。
「『生者』さえよければ、共に探してみるのもよいかもしれないな」
「……いや、絶対ロクなことにならないだろう。『ガウェイン』さんに悪いし、現状維持が一番だ」
「むぅ、なぜアイツの名が出てくる」
何度も『騎士王』を通報していれば、関係性もだいたい分かってくるというものだ。
何より、『円卓の騎士』呼び出しをやると一番出てくるのが『ガウェイン』さんだし。
「まあ、不老不死はともかく健康第一なヤツならいつか造ってやるよ──相応の対価は支払ってもらうがな」
「……それでも充分な価値があると思うぞ」
それを決めるのは俺だ。
どうせなら、『騎士王』にも健康的に過ごしてもらいたいからな。
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