虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

命懸けの鍛冶



 アイプスル

 交渉の結果、刀鍛冶に関する情報を提供してもらう。
 さすがは【刀王】、刀だけに関すればかなりの技術革新が行われていた。

 そうした技術を受け取る代わりに、こちらも刀以外の武器を鍛冶師たちに贈った。
 ……刀以外の武器には興味を持たないトップなので、他は自由に扱っていいらしい。

 そんな武具の数々には、俺がこれまでに集めた技術が一つずつ使われており、鍛冶師たちの興味をかなり集められた。
 多重術式や刻印術式、色物だと機械仕掛けの武器などを贈ってある。

 媚を売っておけば、彼らは応えてくれる。
 話によれば、鍛冶師はノルマさえ満たせば何をしてもいいらしいし……酒とツマミを提供すれば、緩くなった口がさまざまなことを教えてくれた。

「──新作の完成だ」

 倭島の刀鍛冶師から教わったことは、決して特別な技術というわけではない。
 エルフやドワーフのように、種族の才能が注ぎ込まれているということでもない。

 ただただ純粋に向き合い、腕の髄を叩きこむことに関する心構えを習った。
 普人だから、日本と似た環境に在るからこそ生まれた──魔力に頼らない武器の作り方という、今までやったことのない生産法だ。

 そもそも俺は:DIY:の恩恵によって、これまであらゆる物を生みだしてきた。
 そこには神の恩恵があり、常に快適な状態で生産が行えるように祝福が掛かる。

 ──そう言った観点から言えば、彼らのやり方は俺には向いていない。

「一からやるってなったら、こっちの世界でもやっぱり苦労するんだな。『SEBAS』も、いつもご苦労様」

《旦那様の与えてくださった義体に不満などございません。直接の生産活動は行えませんが、先にも言った通り生産に関わることはすべて旦那様にお任せしておりますので》

「その割には、複製や大量生産は全部任せているからな。……これ、複製できるか?」

《可能かと問われれば可能です。しかし、この形状以外での再現はまだ行えません》

 俺が打ち上げたのは包丁だ。
 簡単ではなかったが、『SEBAS』が選別してくれたベストな配合量の鉱石を用いたうえで、魔力もいっさい使わずに超高熱の中で槌を打って作り上げた。

 ただし、そのために俺は相当な命をすり減らしてしまったがな。
 減らす、というか丸々一つずつ消費していた気もするけど……とにかくそうして秒単位で死にながら打ち上げたのがその包丁だ。

「特殊な効果は無いけど、単純に切れ味がいいし長持ちするからな……錆びないように加工してから、ルリの所に贈っておくか」

《では、手配しておきましょう》

 普通に持っていくと捕まるだろうし、今回は転送の方にしておこっと。


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