虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

東国巡り その14



 凄まじい打ち合いとなってしまった。
 嵐のように目まぐるしく振るわれる斬撃、その一つひとつに対応しなければならない。

 だが、『命刀[生鳴]』にそういった機能は存在しない──その効果は生命力の増強。

 シンプルだからこそ、効果は極めている。
 自慢ではないが、これを装備している時に限れば人並み以上に生きられるのだ。

「しかし、厄介ですね……」

「それはこちらが言うべきこと。ここまで生き延びる者はそう多くはない……誇れ」

「そうですか、それはありがたい。では、そろそろお開きということで──」

「何を言うか。ようやく体が温まってきたというのに……さぁ、楽しもうではないか!」

 そういって、さらに速度を上げてきた。
 魔力を結界に回し、擬似的な身体強化の強さを向上させる。

 どうにか捌けていた動きだが、さすがに限界を迎えてしまった。

(起動を頼む)

《畏まりました──未来投影開始》

 無粋云々? 虚弱の身で挑む時点で、究極のハンデを背負っているだろうに。
 だいたい、俺はありがとうとは言ったがそのハンデで充分なんて言ってないからな。

 ふっふっふ、やりたいようにやってやろうじゃないか。

「行きますよ」

「……変わったか」

「分かりますか? これもまた、『生者』の足掻きというものですよ」

「そうか……ならば、こちらも」

 未来演算によって攻撃の軌跡が読めているが、それでも対応に苦労する。
 結界の機能は未だに解放せず、あくまで身体の補正にしか使っていない。

 だが、それもそろそろ限界だな。
 なんだか足掻くことに肯定してくれたようだし、つまりは何でもありってことだろう。

「──【刀王】」

「むっ」

「再現率は低い紛い物ですが、貴方を満足させるために粉骨砕身しましょう」

 解析し続けた【刀王】の動きを再現し、本人とぶつけることでより高めていく。

 本人よりも本人らしい、『SEBAS』という史上最高のAIの力があれば、その程度のこと容易く可能だ。

「くはっ、くはははははっ! よい、よいぞ『生者』ッ! そうかそうか、超えるべきは己自身か……まさにその通りだ!」

「ぐはっ」

「どうしたどうした! 俺はまだまだ本気ではないぞ! 限界を超えさせてくれ、もっと高みを見せてくれ!!」

 変なスイッチが入った【刀王】は、高笑いと共に苛烈な斬撃を加えてくる。
 これまでの攻撃が嵐だとすれば、今の攻撃は渦潮のようなものだ。

 ──つまり、呼吸をする暇すらない。

 だが、ここまでやれば全力で殺られるのも手抜きで殺られるのも変わらない。
 ここは一つ、満足させることを家臣たちに恩ということで売っておこうじゃないか。

「私の力、その解放を許可していただけました。その返礼をしましょう──『窒息死』」

 その瞬間、世界は静寂を取り戻す。


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