虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
東国巡り その12
「その刀の銘は[屍装]、鞘の銘は[妖塞]です。少々気性が荒いので、試すというのであればお気をつけください」
「……ふむ」
ただ頷き、【刀王】はジッと受け取った妖刀を眺め続ける。
ここではないどこかに意識が飛んでいるような虚ろな瞳──彼はどうやら、刀と対話ができるようだ。
「『生者』、其方は何者だ?」
「何者か、と申されましても……私は私、末端の『超越者』でございます」
「ぬかせ。この刀は何も語らぬ、経緯というものが何もない。妖刀であることと、それは決して交わらぬ。いったい、何をした」
「私は行商人です。求める顧客の下へ、ただ品を届けるだけですよ」
ニコリと笑みを浮かべ、そう伝える。
読み取れる力を持っていようと、読み取れるものが無ければ意味を持たない。
──生まれたばかりの存在に、今を生きる記憶など存在するはずがないのだ。
「だが、この妖気は本物。ただの紛い物ではないということか……外へ向かうか」
「では?」
「うむ。気に入った、其方の行いを見逃がすという件については了承しよう。だがまあ、少しばかり試しておきたいことがある。この妖刀を持ってきた者として、少し場に立ち会いしてもらおうではないか」
「……分かりました」
周りの目が──物凄く不憫なものを見る目なのが気になる。
だが、今はそう答えるしかない……そう、これは仕方が無いことなのだ。
◆ □ ◆ □ ◆
「そして、フラグだった……」
「うむ、天晴れである」
当然ながら、場所は広い空間。
まるで打ち合いが行えるように整備がされた、周囲に障害物が無い場所である。
「『生者』よ、これから打ち合い其方が勝った場合はあらゆることを了承しよう。だが、負けた場合は制限を設ける──よいな?」
「具体的な制限を教えてください。加えて、ハンデを頂きたいです」
「制限は教えぬ、内容によっては其方が手を抜きそうだからな。ハンデは……そうだな、この二振りを使わずに闘おうではないか」
「……ありがとうございます」
危険すぎる二振りを使わないでくれるならば、俺の死数(死亡数)も減るだろう。
それに、この機会であれば【刀王】の解析もよりできるようになる。
「まずは、封を解くことからだな。剥がせば解放されるのであろう?」
「はい。すでにご存じかと思いますが、中に封じられているのは人工的に生みだされた存在でございます。そのため、操る力はそれに特化しているらしく……使い手を選ぶとは、まさにこのことですね」
「面白い。この【刀王】に振るえぬ刀など存在せぬ、それを証明してみせよう」
そして、【刀王】は封印の札を外し──
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