虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
東国巡り その10
城内への入場は認められた。
俺の持つ刀の中でも、かなり作るのが面倒だった品だ……そうでなければ困る。
しかし、一つだけ問題があって──
「あの、皆さん。あの店に寄ってみたいのですが……」
「ダメです。貴殿には、すぐに城へ向かってもらいます。【刀王】様はおそらく、すでにその存在に気づいておりますので」
「最悪、仕事を放ってでもこっちに来ちまいそうだからな……そうなると、どこもかしこも大パニックだ」
「そうでしたか……すみません」
刀の運搬は俺がするのだが、謁見する前に何かトラブルを起こさないように護衛が何人も付いている。
以前、届ける前に奪われた結果、怒り狂ったという前例があるそうだ。
「……では、誰か一人にお願いをしたいのです。駄賃は弾みますので、そこのお店で一つ食べ物を買ってほしいのです。何分、移動の際はロクなものが食べられずにいたので」
「…………分かった」
兵士の一人が俺から金を受け取り、食事を買って来てくれた。
俺が指定したのは団子屋、その手に持っているのはみたらし団子だ。
「ありがとうございます。あっ、お釣りはプレゼントしますよ」
「本当にいいのか?」
「礼で報いませんと。このような護衛までしていただけるのです、ついでにこちらも差し上げますので、私を送り届けたあとは皆さんで楽しんでください」
「おっ、気が利くな大将。仕事後にちょうど一杯やりてぇ気分だったんだよ!」
他の護衛たちも盛り上がる。
金を受け取っていた兵士も、微笑を浮かべているので問題はないだろう。
「では、少し行儀は悪いですが食べながら向かいましょう。【刀王】様もお待ちとのことですし」
「ああ、急ぐとしよう」
心なしか足取りが軽くなった彼らと共に、鋭い武器だらけの城へ向かうのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
城の中は外よりも大人しく、武器だらけというわけではないようだ。
ただし、部屋によってはそういった場所もあるらしい……俺が作れない武具があるかどうかを知りたいな。
「ところで、【刀王】様は本日何をなされているのですか?」
「刀の手入れをされている。このときばかりは他の刀にうつつを抜かすわけにはいかず、精神統一をして愛刀に集中なされている。だからこそ、貴殿は救われたのだ」
「なるほど……その幸運に感謝します」
「……だが、それが不幸でもあるがな」
なぜだろうか、とても嫌なフラグがたった気がする。
兵士の言ったことが、本当に実現しそうな台詞だったからな。
「──さぁ、ここで待機していてくれ」
案内された部屋で正座して待機する。
ついに謁見である……三桁死ななければ、御の字ってところかな?
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