虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

東国巡り その08



 男たちは撤退した。
 俺も殺す気は無かったので、そのまま防御に徹していたら諦めたのだ。

 というか、殺せないけどな……あの刀に殺傷能力は持たせていない。
 まあ、それから村人と交流して行商人としての仕事を全うする。

 少々怯えた目で見られてしまったものの、商品に罪は無いということでそれなりに買ってくれた。

「──しかし、どの時代設定なのかまったく分からなくなってきた」

《刀狩りとなると、江戸時代でしょうか? しかし、こちらは江戸のある関東では無いのですが……》

「刀を集める、ここがポイントか? 一つだけ心当たりがあるし」

 村人が抵抗しなかった理由は、武器を持ち合わせていなかったからだ。
 それなら鍬でも鋤でも使えよ、ということになりそうだが……相手が刀で威圧を掛ければ、戦わずして降参するだろうけど。

 そんな刀が奪われた理由──それはこの領地を支配する奴が命じて奪ったからだ。

 鍛冶師なんて全員攫われたうえ、ソイツの所で最高の一品とやらのために延々と刀を造らされているんだとか。

「【刀王】か……名は体を表すって言うが、こっちの世界だと職業が体を表すのか?」

《しかし、献上した者には相応の褒美を贈るとのことでした。旦那様、一度試してみてはいかがでしょうか?》

「うーん、権力者とお近づきになるのはいいが……ロクなことにならないだろう?」

《間違いなく、そうなるでしょう。しかし、メリットが多いのもまた事実です》

 相性さえ合えば、『超越者』はただの村人に敗北する(サンプルは『生者』)。
 決して無敵に非ず、ただ立ちはだかるモノがとんでもなく面倒なだけで手段はある。

 倭島において、もっとも面倒なのは間違いなく『陰陽師』であろう。
 性格とできることが一致しているため、えげつないほどにやりたい放題が可能だ。

 単純な戦闘能力でいえば、ほとんど召喚能力に特化している『陰陽師』は戦闘系の最上位職業──王や帝、神など──が相手となれば成す術もなく敗北する。

 だが、彼女には式神が居る。
 そのすべてが開示されていない現状では、全面戦争を行うわけにはいかない──コメを守るためには、あくまで平和的な関係を築く必要があるのだ。

「策はあるか? その中で、戦闘行為を用いない解決方法を提示してくれ」

《……村人からの情報のみで【刀王】を定めた場合──三パターンございます》

「三か……これまでの経験からして、たぶん実際に使えるのは一つだけだろうな」

 うん、これはたぶん当たっている。
 いつだって、この星の住民たちは期待を裏切らない。


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