虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

東国巡り その07



「──到着っと」

 そこに脚を踏み入れた途端、ソイツらは警戒心を露わにした。
 先ほどまでやっていたことを中断し、こちらへ近づいていくる。

「……何者だ、テメェ」

「行商人ですよ、ただの」

「嘘吐け! どこの行商人が、わざわざ空から降ってくるんだよ!」

「時代は進んでいますので。海からだろうと空からだろうと、どこからだろうと人はやってくるものですよ」

 光粒銃、は危険なので別の品を用意。
 鋭さと見た目だけを重視した、俺専用の軽い刀──『命刀[生鳴]』。

 それを瞬時に構えると、アチラさんも自分たちの武器である刀を構えだす。

「何者だ、テメェ」

「だから言いましたよ、商人ですって」

「……言いたくねぇなら仕方がねぇ。オメェら、無理にでも聴きだせ」

『へいっ!』

 そうして俺を囲むと、彼らはご自慢の刀を振るって連携とも言えない徒党を組んだ攻撃で俺を殺そうとしてくる。

 刀の戦闘データはまったく持ってないんだが……見よう見まねでやってみるか。

「西洋剣は叩き潰す感じだから、それをそのままやるわけにはいかないな……なら、軌道の確認をしてから、刀の最適な動きを解析すればいいのか? いや、それはこいつらが使える場合に限るのか……」

「テメェ、何ぶつぶつ言ってやがる!」

「おっと、申し訳ありません。あまりに退屈そうな気がして、注意が逸れていました。早くしてくれませんか? 貴方がたと商談をする気はございませんので、はっきり申し上げて──時間の無駄です」

『──っ!』

 何かが切れたような幻聴がすると、彼らは憤怒の形相で襲いかかってくる。
 ……男にやられてもなー、女にやられたとしても場合によっては嫌だけど。

「『SEBAS』、頼む」

《畏まりました。防衛プログラム起動──自動解析スタート、未来投影開始》

 振られる刀一本一本、すべてを知覚したうえでギリギリを避ける。
 刀の材質から持ち主の体調まで、すべてを調べたうえで観察していく。

「そしてこれ……相変わらず便利だな」

《お褒めに与り光栄でございます》

「俺の大好きなヤツだ。これからも頼むぞ」

 呪われたアイテムがもたらすのは、災禍の力にして最凶の力。
 ただ、ドラマチックな展開が欲しいわけでもないので、戦闘経験と優秀なAIが生みだしたプログラムで充分だった。

 視界には『SEBAS』が演算した、高確率で当たる攻撃の軌跡。
 もちろんすべてが当たるわけもなく、常識外の奴らが相手だとほとんど当たらない。

 だが、筋繊維の一本一本まで調べ尽くした彼らの動きであれば──丸分かりだ。


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