虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
東国巡り その04
村の中は、やはり過去風だった。
生活ぶりがな……現代に生きる俺たちとはまったく異なっているんだよ。
「あ、あの……すみません」
「はい、どうかされましたか?」
「私は旅の行商人なのですが、都から出たばかりで何も知らなくて。よろしければ、少しお話をさせていただきたいのですが……」
「……そうなのですか」
顔がいかにも、そんなことも知らないのかよという表情になっている。
怪しいということは分かっているし、偽装の魔道具のせいで俺の顔を認識できていないのも、その理由だと思いたい。
「ちなみに、何も荷物を持ち歩いていないのはどういった理由で?」
「こちらのバッグが魔道具で、とても中が広いのです──ご覧の通りです」
「なるほど、たしかにそれがあれば商人を目指すのも仕方有りませんね」
「ええ。思い立ったが吉日、張り切って準備してしまいました」
バッグから巨大な大剣(軽い)を取りだして、収納量が見た目通りではないことを証明しておく。
それを見た村人は、目を輝かせて魔道具を見ていた。
「ああ、この魔道具も同じ型がありますので販売しますよ。ただ、先ほど話した通り常識というものが欠けているようでして……この村の長に会わせていただけないですか?」
「わ、分かった。ちょっと待っててくれ!」
物に釣られた村人は、猛スピードで村の中でも一番大きい建物の中へ向かっていった。
空間拡張系の魔道具は、複製も可能なので別に売ることに異存はない。
……恩は、売っておくべきものだろう。
「き、来てくれ。村長が会うらしい」
「ありがとうございます」
案内されて村長の下へ向かい、さっそく交渉を行う。
最初は怪しく思われたが、俺が『陰陽師』と会ったことがあることと持ってきた品がレアすぎることに根負けし、了承してくれた。
「ほ、本当に宜しいのでしょうか?」
「構いませんよ。ただし、先の約束事はできるだけ遵守してもらいたいですがね。最悪、ここに来れなくなってしまいますので」
「わ、分かりました」
絶対に、とは言わないが可能な限り俺のことを言わないでほしいと伝えておく。
見せつけたポーションの価値は、おそらく口を堅くするのに役立つだろう。
「そ、それで商人様は……どれくらいの量を持ち込んでいただけたのでしょうか?」
「さすがに大量に購入されて、それを期限切れにされるのも困りますからね。各家に一つずつ、そうするぐらいの数はありますよ」
「本当ですか!? そ、それでお値段はおいくらほどに……」
「そうですね……初めての出会いです、この運命を祝いまして──」
数字を口にしたところ、村長はとても驚いた表情を浮かべる。
そして、大量のお金を俺に恵んでくれるのだった。
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