虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
東国巡り その03
バイクではなく、原付。
排気するモノがまったくないという意味では、ある意味間違っていないかもしれない。
速度だけがいろいろと問題がある魔力式の原付なのだが、その乗り心地は最適だ。
「風が、俺を呼んでいるのさー」
この台詞も、バイクで言っていればなかなかさまになっていただろう。
しかし、形状からして原付はバイクとは似ても似つかない……某日曜のアニメに出てくる酒屋の原付である。
「ちわーす、DIY商会でーすってか?」
ちなみに、これが商人ギルドに登録しておいた商会名だ。
行商人であろうと、隊商という形で組織として動く場合があるからな。
俺は独自に動いているが、『SEBAS』に提案されてあるときからメンバーを商人ギルドに申請して増やしてある。
テナントが思いのほか儲かり、生産ギルドだけで庇えない額になっていたからだ。
「この台詞を言うなら、やっぱり酒瓶も販売するか? 本音を吐かせるなら、やっぱり飯と酒が一番だしな」
行商人として動いたことなど極僅かでしかないが、それでも現代の企業戦士としての経験がそう告げている。
放出させる、ということではなく固い口を開くようにするだけだ。
「さてさて、そうしているうちに村が見えてきたな……『陰陽師』の見張りがあるだろうし、気を付けていかないとな」
少なくとも関西辺りは支配している。
そんな彼女が、自分の領域を雑に扱うとも思えない。
あとで分かったことだが、『陰陽師』の権能は契約数の無限化──相応のリスクはあるが、監視には便利な力である。
◆ □ ◆ □ ◆
コミたちの協力によって、妖術の他にもいくつか物ノ怪に関する情報を集めていた。
男衆に頼みこみ、妖術を運用するために彼らが扱う妖気を解析してあるのだ。
魔道具として再現済み……という話は置いておくとして、こちらもレーダーで探せるようにしておいた。
式神には妖気が備わっているので、確実にそれで見つけられるのだ。
「──よし、まだバレてないな」
それと同時に、式神たちの捜索網に引っかからないように工夫を凝らしている。
彼らと何度かかくれんぼをして、どのように探したり隠れたりするのかを調査した。
そして、こちらも偽装の魔道具に組み込んでおり、ステータスの看破も妖術バージョンならばある程度防げるようになっている。
「村の方は……特に問題なさそうだな。さすがに『超越者』は『陰陽師』を知っているだろうからお膝元で暴れるわけないか」
そういった意味では、彼女に感謝するべきなんだろう……とても遺憾だがな。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
127
-
-
1512
-
-
157
-
-
5
-
-
769
-
-
56
-
-
93
-
-
3430
-
-
107
コメント