閉じる

虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

東国巡り その01



 N15E25

 スタート地点から、はるか四十区画も先のフィールド。
 ここは地球における、日本と同じ座標に存在する倭島という場所。

「……さて、いきなりバレるってことにはならなかったか」

 この地には『陰陽師』と呼ばれるさまざまな式神を操る『超越者』がおり、実質的な支配をしているのだ。

 住んでいるのは関西辺りが在る『央都』、その中でも京都っぽい場所である。

「そういえば、真ん中のエリアにしか来てなかったんだよな」

 前回はそんな『陰陽師』のお呼び出しを受け、俺はこの島にやって来た。
 しかし、直接央都の少し外に転移させられたので、それ以外の擬似日本にはまだ巡れていない場所が多すぎるのだ。

「そう、結局コメは『SEBAS』が回収してきてくれた分しか手に入らなかったし」

《では、今回はコメを探されますか? 一種類の品種改良では、さすがに限界が生じておりますので》

「そうだったのか……ずいぶんと美味しいものだから、すっかり忘れていたよ」

 コメも妖界に有ればよかったんだが、残念なことにそもそも水田が無かったんだよな。

 あまり時間もなく、『陰陽師』の目を掻い潜っての捜査も困難……いろいろと重なったため、すべてを探せてはいない。

「今回は大丈夫なんだろう?」

《はい。すでに、物ノ怪の皆さまに協力していただいた偽装パッチを当てております。それにより、人化できない物ノ怪にはまず間違いなく発見されません》

「たしか、格が高いと人化できるようになるらしいな。あえてなってない奴もいるみたいだけど……じゃあ、それぐらい格が高い奴にはバレるのか?」

《彼らには妖術──妖気を操る術がございますので。物ノ怪は伝承や神話に基づき、より強化される存在……そして、主との契約があることでさらに強化されます。『陰陽師』の場合、その強化幅が桁違いです》

 要するに、配下が強くなるということだ。
 妖術についてはコミから教わり、すでに情報を『SEBAS』が纏めているが、かなり個人の才に偏った技なので、一人ひとりを調べないと理解しづらい技でもある。

「……そういえば、この島にいま『超越者』は何人いるんだ?」

《確認します……四人のようです。うち一人は『陰陽師』。残りは未遭遇のため、詳細は不明です》

「三人か……日本っぽいし、侍とか忍者とかかな? それなら面白そうなんだけど」

 特に忍術!
 この世界独自の進化を遂げた忍術があるのであれば、ぜひともこちらで解析させてもらいたい!

 ……子供のころ、忍者好きだったんだよ。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く